第11話 世紀末
その妖怪の背後の空間が歪んでいる…それは赤黒く、明確な「死」だと理解出来た。
「どうして…こんなところに妖怪が!!!」
俺は部屋の隅に置いてあった日本刀を取り出し、妖怪を斬り付けた。
しかし刀身が触れても通り抜けてしまい、何のダメージも与えられなかった。
「うわぁああああああ!!来るな!来るな化け物おおおおおお!!!」
海人は赤黒い空間に飲み込まれてしまい、後日、施設の外でバラバラ死体として見付かった。
―――戦場―――
青い壁の化け物と自衛隊員が戦っている。
「我々を囲んでいた、この憎き壁にトドメを刺せる日が来ようとはな!」
送り犬は青い壁に向かって口から炎の玉を吐き出し攻撃して焼き尽くす。
壁はおぞましい悲鳴をあげながら燃やされ、溶けていった。
「すごい、銃でも小型ミサイルでも駄目だったのに、それだと効くのか!」
青い壁からは無数の顔が伸びてきて送り犬に襲い掛かる。
犬はそれを避けながら1体ずつ顔を噛み砕き粉砕して倒していった。
「人間、金属探知機はあるか?
おそらく反応したところにマイクロチップが入ってるはずだ!
顔は私が引き付ける、だからその間にマイクロチップの位置を探し出し、教えて欲しい」
「了解だ、犬!」
「任せておけ、喋る犬よ!」
隊員達は青い壁の周りを走って金属探知機を使い探っていく。
「ピピピピピピ」
すると、探知機が反応する位置があった。
「おーい!ここだぁ!!ここにあったぞ!!」
すると、送り犬と戦闘中だった青い顔が、目の色を変えて隊員のほうに向かっていく。
「気を付けろ、どうやらそっちに行ったぞ!食われないように避けてくれ!」
犬の指示で隊員達は散らばって逃げた。そして近づいてくる青い顔に銃を撃つ。
しかし青い顔は銃撃で潰れては復活し、潰れては復活を繰り返していた。
「マイクロチップはそこか、私が破壊し、噛み砕いてやろう!ガルルルルル!!」
犬は巨大化し、青い壁の隊員が教えてくれた位置を牙でかぶりついた。
すると、確かな歯応えがそこにある。送り犬はその金属製のマイクロチップを思いっきり噛み砕いた。
パキンと音がして割れたような感覚がある。すると青い壁は動かなくなった。
「お兄ちゃあん、お母ちゃあん、もう人間の肉なんか食いたくないよぉ」
突然、青い顔の1つがそんなことを叫び出し、涙を流していた。
「俺もだよ、なんで今までこんな事をしてたんだろうな…」
「そうね、私達、いったいどうしてこんな姿に…」
青い壁は完全に我を取り戻し、まるで人間のような声で言葉を話し始める。
「率直に言う、私達はあのギーク・ハザード達に操られていた、仕返しに力を貸して欲しい。あと道をあけてくれ」
犬がそう言うと、兄らしき青い顔が言葉を話した。
「ああ、君か…軍隊の人達も、本当に悪かったな…」
「ごめんなさい、私達、あなた達の仲間を何人も食べてしまったわ…」
女言葉で喋る青い顔の1つが涙を流している、おそらく3つの顔の中では母親なのだろう。
「我々に協力してくれると言うなら許そうとも」
「今はあのギーク・ハザードと言うテロリストから世界を守らねばならん」
すると青い壁は、道を開き、まるでタワーのように空に向かって伸びていく。
「こうすれば、邪魔にはならないでしょう」
「お詫びにはならないかも知れないが、俺達も力を借すさ」
「お兄ちゃんとお母ちゃんが言うなら僕も力を借すよ」
青い壁は、巨人の姿になり、皆の前で謝罪の意味も兼ねて頭を下げた。
ただ…自衛隊、青い巨人、送り犬は、残念ながらその後、強力な魔族と戦い敗北し、死亡したそうだ。
―――とある森の中―――
「我が召喚せし新たな魔族の軍勢よ、準備は整いましたか?」
シルクハットに杖を持ったマジシャン風の男、ガーネット・スター。
彼は魔族達に囲まれて、話をしていた。
「今日ここから、私達の歴史は始まるのです。貴方達は試作品のあの者共とも違う、人類の上位種族です。まずは手始めに、この地「日本」でその力、見せ付けてやりなさい!」
「「うぉおおおおおおおお!!!!」」
そうして日本はたった1日で焼け野原にされてしまったそうだ。
偶然生き残った人間達はギーク王国の民として迎え入れられる事になる。
しかし身分は最も低く、その後の人体実験の材料として扱われたり、待遇は最悪だったそうだ。
―――その後―――
ギーク・ハザードと魔族達は、世界を相手に戦争を仕掛け大勝利を収める 。
彼らに戦いを挑んだ大国は跡形も無く消滅しており、残ったのは小国だけだった。
世界はギーク・ハザードによって一度滅び、そして彼らに都合の良いように作り変えられてゆく。
その後、残った小国とも戦争を繰り返し、魔族も生み出し、人類と魔族との悲しい歴史が始まる。
―――そして遥か未来―――
数千年も先の未来の世界のことだ。
そのカジル村と言う場所で1人の男の子が誕生する。
「トウコ、この子は将来きっと大物になるぞ」
「そうねあなた、ユウトったら、まだ言葉もわからないのに、勇者の本をあんなに大事そうに抱えてるものね♪」
「ああ、ユウトなら、この時代の諸悪の根源を解決してくれそうな気がする」
父、カイトの目には、世界がギークに滅ぼされる過去の光景が浮かび、ユウトを見つめながら涙を流していた。




