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無自覚な幸福

作者: 南波英人

「何が楽しくて生きてるの?」


私は両親が不思議で仕方がなかった。


二人ともこれといった趣味もなく、テレビだってニュースぐらいしか見なかった。


仕事が生き甲斐というわけでもわく、ただ淡々と生活しているようだった。


高校生だった私は反抗期だったのかも知れないがそんな両親にいつもイライラしていた。


「何が楽しくて生きてるの?」


そう尋ねると両親は怒るわけでも悲しむわけでもなく、私を不思議そうに見つめるだけだった。


楽しみもなく老いて死ぬだけの人生。


両親はそんな人生を歩もうとしている。


私はそんな人生は絶対に嫌だった。


だから私は人生を楽しもうと色々なことに挑戦した。そのおかげで思い出も沢山できた。


若かったおかげだろう体を壊すこともなかった。


社会人になって少しずつ落ち着いた生活になっていった時、伴侶を見つけることもできた。


そして子供を授かることもできた。


仕事は大変だったが家に帰って「家族」と過ごすだけで幸せだった。



お金持ちになったわけでも社長になったわけでもない。


ただ、一緒に過ごすだけの幸せは今まで味わった事のない満足感を私に与えた。


子供が大きくなると、真剣な顔で尋ねられた。



「何が楽しくて生きてるの?」


私はおかしいやら嬉しいやらで何も答えないで、ただ不満そうに私の顔をみる息子の顔を見つめるだけで何も答えなかった。


息子はこれから私のような「つまらない」人生にならないように必死に努力するだろう。


そして沢山の遠回りをして私のように「幸福な」人生を探し当てるだろう。


遅くなってしまったが私は、写真立ての中で笑う両親にありがとうと伝えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 表題通りのほのぼのとしたオチですね。ささやかな生活が一番です。
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