過去を話しました
「あなたの生い立ちを聞かせてください」
……よりによってこの質問かよ。もっと他にいいやつもあっただろうに。嘘とかつかれたらどうするんだ?こいつ。
「理由を聞いても?」
「そうですね。強いて言うなら趣味ですね」
にやりと笑いさっきの俺の喋り方を真似をした。
「あっ。ちょっとお前のこと嫌いになったわ」
「あらあら、それはなぜでしょう」
なんかさっきと態度が全然違うんですけど、この子。……そうか、俺に嫌われようとしてるのか。そこまでしてお金を貰いたくない理由があるのか?
「わかった。その質問に答えてやる」
「えっ?」
「俺は東の国の出身だ。親はいない。自力でここまで強くなった。金はギルドの依頼をこなしてたら勝手に溜まった」
淡々と説明していく。嘘は付いていない、全部本当のことだ。このゲームを始めた時の事を俺は自分の人生のように彼女に話した。もちろん現実の話はしなかった。
「話しは以上だ。別に信じなくてもいいがな」
「いえ、あなたは嘘を付いてませんでした。約束は約束です。あなたを信じましょう」
「なんで俺が嘘をついてないと思った?」
「私には人の嘘を見破る能力があります。生まれつきのユニークスキルです」
俺のオートスキルと似たようなもんか。生まれつきって事は……なるほどねぇ。
「お前も苦労してるんだな」
「あっ、わかります?」
くすくす笑うその顔は疲れているような見えた。
「私のお父さんが借金をしてたんです」
「……」
「それでうちの宿が担保に入ってたんです。勝手に同意のサインまでされてました。お父さんは泣いて謝り続けてました。ダメな父親でごめんな、って。それから返済の日々が続きました。前も話した通り月の返済額は払っていました。でも急に全額払え。って言われてもそんなお金うちにはありません。そんな所へあなたが来たんです。」
「だったらなぜ金を貰おうとしないんだ?」
「これは私達家族の問題です。人様を巻き込むわけにはいきません。」
なるほどねぇ、これでやっと話が繋がった。
「なら俺から借金しないか?」
「えっ?」
「俺のこと信用してるんだろ?俺ならいきなり全額出せなんか言わないし滞納したってなんも言わない。いい条件だろ」
「でも……」
「俺が嘘をついたいるように見えるか?」
「……わかりました。わたしにお金を貸してください」
「承知した」
ドンドンドン!ドアが激しく叩かれる。
さぁ。話を付けようじゃないか。