ラミナリアオンライン
『ようこそ。VRMMORPGラミナニアオンラインへ。』
このゲームを買って最初に聞いたのは機会質な声だった。
今じゃこの声を聞いたことがあるやつなんて相当な古参プレイヤーだけだと思う。もちろん俺はその古参プレイヤーなわけなんだが。
ラミナニアオンラインがサービスを開始してもう7年が経っている。そして今日の23時59分にこのゲームはサービスを終了する。何でも運営会社の社長が夜逃げしたとかなんとか。年々プレイヤーが少なくなってきて赤字になりつつあったらしい。俺はこのゲームの1人のファンとして最後まで残っているつもりだ。
・・・さて、サービス終了まであと10分か。やっぱ最後はあそこで終わるか。
ラミナリアオンラインの大都市の中心に高さ50mはありそうな巨大な桜の木がある。カップルの憩いの場だったのだが今は誰もいない。
「この桜を独り占め出来る日がくるなんてなぁ」
独り感傷に浸って桜を眺め続ける。正確にはNPCがいるのだが規則的にしか動かないのでこの場所を邪魔される心配はない。
残り1分。
この7年間色んなことがあった。コツコツお金を貯めてた新人だった時、レベル上げに精を出していた時、ギルメンとバカしてた時。全部が俺の宝物だ。
残り30秒
明日は6時起きだから終わったらすぐに寝ないといけない。最後にオンライン中のフレンドがいないか確かめてみるか。・・・まぁいないわな。
残り10秒
今まで楽しかったぜ。新しく出たらまたプレイしてやるよ。そう言って俺は目をつぶった。
3、2、1――――0
「・・・は?」
目を開けたその先には巨大な桜の木があった。運営が日にちでも間違えたか?
「カーソル」
目の前にスクリーンのように映像が反映される。
「ログアウト」
・・・ログアウトできない。てゆうかログアウトのところが空白になってるんだけど。おいおい何かの冗談だろ?顔面蒼白にしていると
「大丈夫かい、どっか具合でも悪いのかい?」
「い、いえ。大丈夫です」
「そうかい。気おつけるんだよ」
そう言って立ち去るNPCの酒屋のオバチャン。酒屋のオバチャン?
なんでNPCが自分の店から出てるんだ?辺りを見渡すとベンチに腰をかけている女性や、酔いが回って大声で歌を歌う男達。
おかしい、何かがおかしい。いても立ってもいられずに俺は目的地も考えずに走り出した。