とりあえず昼寝
ぼくは猫だ。
とんがった耳と、ビー玉のような眼。
鼻をクンクンさせるけど、犬には到底敵わない。
好きなものは魚……と言いたいとこだけど、ぼくら猫は肉食だ。鳥ささみ肉のほうが大好きだよ。
あと日向ぼっこはかかせないね。なんてったって気持ちいい!体中がぽかぽかしてくると、つい喉をゴロゴロならしちゃうんだ。
そんなぼくを見て、ママは優しく撫でてくれるのさ。
ああ、今日も心地よく眠い。
窓辺に敷かれた毛布の上で、いつも通りゴロゴロしてると、不意にママが立ち上がった。ぼくがママを見るのは条件反射だ。
「もう…寝てていいのに。起こしちゃった?ごめんね」
ママはそう言って額に手を伸ばし、爪で掻くように撫でてくれる。思わず、にゃぁぁん。と声が漏れた。
ママは優しい。ぼくはママが大好きさ。
けど、最近思うことがあるんだ。
それがぼくを不安にさせる。
ママは猫じゃないのかな………?
そう思った経緯はたくさんあるけども、まず、ママはぼくのように全身に毛が生えてない。にゃぁぁんとも言わない。毛繕いは頭だけ。食べてるご飯も違うし、何より二本足で立てるんだ!
ぼくは何度もママの真似をした。
グッと足に力を込め、壁に手を付きながら立ってみた。
ママは「すごいすごい」と嬉しそうに手を叩いてたけど、ぼくはそれに応えてる余裕はなかった。すぐに手が壁から離れて、床にドンッと着地した。
……どうしたらママみたく立てるんだろう?
考え込んでても答えは見つからない。
その代わり、必ずやってくるものは睡魔だ。
目がトロリとして、くあっ…と欠伸する。
ママはぼくを抱き上げ、ソファに連れてきてくれた。
ぼくはさっきまでの不安など他所に、安堵しながら眠りこけた。