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8.深夜のお茶会

 夜明けまではまだ時間がある。


 少し休んだほうがいいのでは、と勧められたけれどとても寝つける気がしなかったので丁重にお断りした。

 そしたら、それならとあっという間にテーブルに菓子とお茶が用意されてしまった。


 それも、とても高級そうな数々が。

 なんて素敵な展開だろう。


「うわぁー」


 これまでに見たことのない美味しそうなお菓子類を前に、リヒーナは思わず両手を胸の前で組み合わせる。


「どうぞ遠慮せず召し上がってね」


 ペールのお姉さんはとても優しくていい人だ。


「ありがとうございます! いただきます!」


 お礼もそこそこに、リヒーナは手始めに一番手前にあった焼き菓子を手につかんでかぶりついた。


「ふぉひひひ!」


 おいしい、とリヒーナは感動のあまり思わず叫ぶ。


「リヒーナ、口の中のもんがなくなってからしゃべれ。行儀悪ぃぞ」


 と、お菓子の山を前にしても相好を崩さないルッチェからお小言が飛んできた。


 ルッチェは甘いものが苦手なのだ。

 人生だいぶん損してる、とリヒーナは思っている。


 ちなみにリヒーナは、嫌いなものなんてひとつもない。


 まあ、貧乏芸人のリヒーナたちにとってお菓子なんてめったに口にできるものじゃないから、甘いものが嫌いだからといって別段困ることもないんだけど。


「ふぁーい」


 リヒーナは小さく首をすくめる。


「すごい食べっぷりだな」


 ペールに呆れ顔を向けられても、今度いつ食べられるかわからないお菓子類を前に、リヒーナは手を止めるわけにはいなかいのだ。


「あなたたちは、ペールの楽師仲間?」


 にこにこと嬉しそうにリヒーナの食べっぷりを眺めていたヒルテリアが、暇そうなルッチェに話しかける。


「楽師なんてそんな大層なもんじゃないっすよ。ただの旅芸人」


 ルッチェは苦笑して出された茶をひと口飲む。


「ついでにいえば仲間でもないですよ。さっきは便宜上仲間といいましたけれど。勝手に巻き込まれておいて、俺に責任を押し付けようっていう腹黒い連中です」


「なんだと?」

「あら。とっても仲がいいのね」


 ヒルテリアにうふふと微笑まれては、ルッチェもそれ以上詰め寄るわけにはいかなかったのか、少し浮かせた腰を下ろして小さく吐息を零した。


「リヒーナさんが食べ終わるまでのあいだ、少しだけ昔話をしましょうか。いいかしら? ペール」

「こうなった以上、別に隠すつもりはないですよ」


 ペールの答えにひとつ頷いてから、ヒルテリアがルッチェとリヒーナにも訊ねる。


「聞いてくれるかしら?」

「俺らが聞いてもいい話なら」


「ふぁい!」     


 そうしてヒルテリアは語り始めた。

 三年前の、バロウ公最後の日のことを。

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