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神様誕生 ―神承者たちの覚醒―  作者: konatsu


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第7承 第1和【八岐大蛇 終の首 主首 起闘】

――白き主首、理を喰らうもの


空が、音を失った。


雲は裂けているはずなのに、雷鳴は鳴らない。

風は吹いているはずなのに、草木は揺れない。

世界そのものが、息を止めていた。


七つの首が討たれた直後――

人類は、ほんの一瞬だけ「勝った」と思った。


その慢心を、白が覆い尽くす。


天空の裂け目から、ゆっくりと降りてくる影。

それは巨大でも、禍々しくもない。

むしろ――静謐だった。


純白。

血も泥も知らぬかのような、完全な白。


八岐大蛇、最後の首。

主首――

“理を喰らうもの”。


「……これが……終わり?」


誰かの震える声が、戦場に落ちた。


主首は、咆哮しない。

威嚇もしない。

ただ、静かに首をもたげ、言葉を落とす。


「人は、理を誤った」


その瞬間、遠方の都市が――

音もなく消えた。


爆発ではない。

破壊でもない。


“存在が、削除された”。


画面越しにそれを見た本部・総指揮室で、

鷹宮総理は言葉を失った。


(……嘘でしょ……)


モニターに映るのは、つい数分前まで人が暮らしていた街。

子どもが走り、誰かが夕食を作り、

“普通の生活”があった場所。


それが、白一色に塗り潰されている。


「……主首、確認」


震える声で参謀が告げる。


「攻撃ではありません……

 存在の否定です」


鷹宮は、拳を強く握り締めた。


(またか……

 また、私は……)


脳裏をよぎるのは、これまで失ってきた者たちの顔。

弟・蒼真。

名を呼べば返事をくれた仲間たち。


「……神承者、前線へ」


声は低く、しかし揺るがない。


「ここで退けば、世界は終わる」



大地に立つ神承者、信承者たちは、

主首を前にして、誰一人として武器を下ろさなかった。


信長は、血に濡れた刀を肩に担ぎ、笑う。


「はは……

 戦の匂いがしねぇな」


その笑顔の奥には、静かな覚悟があった。


「だがよ、

 この国の民を守る戦なら――

 何度だって、立つさ」


彼の背後には、過去に守れなかった者たちの幻影が立っていた。


麗香は、雷をまといながらも、唇を噛みしめていた。


(……怖い)


だが、それ以上に強く胸を打つ想いがあった。


(ここで逃げたら、

 また……誰かが泣く)


幼い頃、雷雨の夜。

母の背中に顔を埋め、震えを抑えていた記憶。


――今度は、私が。


雷鳴が、空を裂いた。


バニーは軽く肩を回し、仲間を振り返る。


「ねえねえ、

 生きて帰ったらさ、

 全員で飲もうよ」


誰も返事をしなかった。

それでも、彼女は笑った。


(……いいよ、それで)


主首が、ゆっくりと首を振る。


次の瞬間――

白光が、戦場を薙ぎ払った。


信長が、最初に飛び出した。


「進めぇぇぇぇ!!」


刀が、白を切り裂く。

だが、手応えはない。


主首の身体は、概念そのもの。

斬ったはずの場所が、**“最初から存在しなかった”**かのように戻る。


「くそ……

 理そのものが敵か」


信長の脳裏に、かつての合戦が蘇る。

槍衾。

血の海。

守れなかった村。


(今度こそ……)


再び、刀を振る。


その背後で、麗香の雷が炸裂する。


「これでも――

 喰らいなさい!」


雷光が主首を包む。

だが、次の瞬間、雷そのものが“消える”。


麗香は膝をついた。


「……そんな……」


主首が、静かに告げる。


「力は、理の一部にすぎない」


白光が、彼女に迫る。


バニーが、飛び込んだ。


「させない!」


彼女の身体が、光を遮る。


その刹那、バニーの胸に浮かぶのは、

「本当の自分」を受け入れてくれた仲間たちの顔。


「……ありがと」


光が、彼女を包み込む。


消える直前、彼女は微笑んでいた。



戦場に、沈黙が落ちる。


誰もが理解していた。

――これは、今までの戦いとは違う。


それでも。


誰一人、逃げなかった。


そして、遠くで――

海里が、その光景を見つめていた。


拳を握り、歯を食いしばり、

胸の奥で、何かが確かに芽吹いていく。


それは、まだ怒りではない。

まだ絶望でもない。


だが確実に、

この世界を賭ける覚悟だった。


白き主首は、静かに次の一歩を踏み出す。

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