表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様誕生 ―神承者たちの覚醒―  作者: konatsu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/79

第6承 第16和【八岐大蛇 漆腫 炎の首 美桜 後闘】

世界が、軋んだ。


炎の首が放つ業火が、さらに勢いを増そうとした――

その瞬間。


炎が、止まった。


否。

止められた。


天地が、静かに呼吸を始める。


大地の底から、

懐かしく、そして決して忘れられない気配が立ち上った。


「……そんな……」


美桜の唇が、震える。


炎の壁の向こう、

未希の背後に――

光が立っていた。


それは、人の姿をしていた。


だが、もはや人ではない。


白と金の光が織りなす神衣。

天地を押し広げるような威厳。


そして――

その瞳だけが、かつてと同じだった。


「……美桜」


声が、届いた。


何度も夢で聞いた声。

何度も失った声。


「……悠……真……?」


その名を呼んだ瞬間、

膝から力が抜けた。


伊邪那岐――

天地創造と秩序を司る神。


だが、

美桜の前に立つ存在は、

間違いなく未希の父親だった。


炎の首が、初めて表情を歪める。


《伊邪那岐……》


《なぜ、戻れた》


伊邪那岐は、静かに答えた。


「戻ったのではない」


「呼ばれたのだ」


「家族に」


「この世界に」


その言葉と同時に、

伊邪那岐の身体に――

ひび割れのような光の線が走る。


美桜は、それを見逃さなかった。


「……時間が……ないのね……」


伊邪那岐は、微笑んだ。


「さすがだ」


「君は、いつもそうだった」


「……大丈夫」


「この時間が尽きるまで」


「全てを終わらせる」


伊邪那岐が一歩踏み出す。


炎の首が咆哮する。


《愚かな神よ!!》


《時限付きの存在が、我を討てると思うか!!》


炎が、世界を焼き尽くそうと広がる。


だが――

美桜が、前に出た。


「……私は……」


「もう……逃げない」


母として。

妻として。

神承者として。


美桜の周囲に、

蒼く澄んだ炎が立ち上る。


それは破壊の炎ではない。

守るための炎。


伊邪那岐は、驚いたように目を見開き、

そして、深く頷いた。


「……共に、闘おう」


夫妻は、並び立つ。


未希が、叫ぶ。


「パパ!! ママ!!」


伊邪那岐は一瞬だけ振り返り、

優しく微笑んだ。


「未希」


「よく、聞きなさい」


「怖くても、泣いてもいい」


「でも――」


「自分を信じることだけは、忘れるな」


炎の首が突進する。

天地創造の神。

秩序そのもの。


伊邪那岐が立つだけで、

暴走する炎は“在るべき場所”へと戻される。


だが――

彼の身体には、崩壊の兆しが走っていた。


光が剥がれ、

粒子となって風に散る。


美桜は、それを見て、歯を噛みしめた。


「……私も……」


「……闘う……!」


美桜の足元から、

蒼白い炎が湧き上がる。


それは燃やさない炎。

守るためだけに存在する炎。


母の祈りが、神威へと昇華する。


伊邪那岐は、隣に立つ美桜を見て、

短く息を吐いた。


「……本当に、強くなったな」


炎の首が吼える。


《ならば、まとめて焼き尽くしてやろう!!》


八方から、炎の獣が襲いかかる。


だが――

伊邪那岐が、腕を振るった。


「生まれよ」


大地が盛り上がり、

秩序の壁が形成される。


炎が衝突し、爆ぜる。


美桜が、叫ぶ。


「未希を……守って!!」


蒼炎が広がり、

未希を完全に包み込む。


炎の首が、伊邪那岐へ突進。


拳と拳がぶつかり合い、

衝撃で空が割れる。


伊邪那岐の一撃は、

世界を“作り直す”力。


炎の首の身体が、

存在ごと削られていく。


だが――

その代償として、

伊邪那岐の身体は、急速に崩壊していった。


「……時間が……」


美桜が、炎を重ねる。


「なら……」


「私が、最後まで燃える……!」


母の炎が、

伊邪那岐の神威と融合する。


それは、

家族の炎だった。


炎の首が、初めて悲鳴を上げる。


《やめろ!!》


《その炎は――》


《世界を――》


伊邪那岐が、最後の力を振り絞る。


「……終わりだ」


天地を裂く神威が、

美桜の炎に導かれ――


炎の首を、完全に貫いた。


爆光。


沈黙。


炎の首は、

灰すら残さず、消滅した。


伊邪那岐は、崩れ落ちる。


未希が、走り寄る。


「……未希」


「パパは……」


言葉を探し、

それでも、正面から向き合う。


「一緒に生きてやれなかった」


「それが、ずっと無念だった」


未希は、涙を流しながら、

必死に首を振る。


「パパ……」


「パパは……パパだよ……」


伊邪那岐は、優しく頭を撫でる。


「ありがとう」


「お前が……」


「生きてくれただけで……」


「それで……救われた」


そして、美桜を見る。


二人は、言葉を交わさない。


それで、十分だった。


「……愛している」


「今も」


「これからも」


次の瞬間、

伊邪那岐の身体は、光となって崩れ落ちた。


静かに。

本当に、静かに。


未希が、泣き叫ぶ。


美桜は、未希を抱きしめながら、

空を見上げた。


「……さよなら……」


「……悠真……」


――八岐大蛇。


その咆哮に、

世界が震えた。


美桜は、悟る。


(……ここからが……)


(……本当の地獄……)


炎が、彼女を包む。


それは――

母が選んだ、最後の戦場だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ