第6承 第13和【八岐大蛇 陸腫 土の首 蒼真 前闘】
【YAMATO】本部、指令室。
無数のモニターが、戦場を映していた。
風は鎮まり、雷は消え、氷は砕かれ――
だが、ひとつだけ、決定的に戻らないものがあった。
静まり返った室内で、
富嶽零式の冷静すぎる声が響く。
「――風の首、討伐確認」
一拍、間。
「――神承者・虎永。
存在反応……完全消失」
誰も、声を出せなかった。
数字とデータで語られるその言葉は、
あまりにも――子供の死を簡単に扱っていた。
鷹宮澪は、椅子に手をついたまま、動けなかった。
「……つらすぎる……」
かすれた声だった。
総理大臣としての威厳も、
死神としての覚悟も、
その瞬間だけは、すべて剥がれ落ちていた。
「……十歳だぞ……」
「……あの子は……」
言葉が、続かない。
天皇陛下が、静かに鷹宮の肩に手を置く。
だが、鷹宮は首を振った。
「……すみません……」
「……私は……」
「……総司令官失格です……」
そのとき。
別のモニターが、強く明滅した。
暗黒の首を討ち、
深い消耗の中にありながら――
それでも、前線に立ち続けている少女。
海里。
彼女は、画面の向こうで、
誰よりも早く虎永の消失を悟っていた。
唇を噛み、
拳を握りしめ、
それでも――目を逸らさない。
「……虎永……」
一瞬、声が震えた。
だが、次の瞬間。
海里は顔を上げる。
「……泣いてる暇はない」
「……虎永が命を懸けて止めた時間を、
無駄にしない」
彼女の背後では、
仲間たちが次々と土偶の群れに押されていた。
戦場は、すでに“地獄”だった。
土の首は、姿を見せない。
代わりに――
地面が割れ、
無数の土偶兵が這い出てくる。
人の形。
だが顔はなく、
胸には歪んだ文様。
「くそっ……!」
蒼真が前に出る。
剣を抜き、
一息で三体を斬り伏せる。
返す刃で矢を番え、
跳躍しながら射抜く。
剣術・弓・体術――すべてが高水準。
だが、終わらない。
土偶は、倒しても倒しても、
地面から“生まれ直す”。
《――地は、尽きぬ》
土の首の声が、
地鳴りとともに響く。
《――人は、土に還る》
《――文明も、命も、例外ではない》
蒼真は、歯を食いしばる。
「……黙れ」
「……土は……」
「……生きる者を、支えるものだ!」
信長の声が、通信に割り込む。
「蒼真、聞け」
「こいつ……本体は地上にいない」
「地中だ」
麗香が続く。
「土偶は囮よ!
本体を叩かないと終わらない!」
バニーが叫ぶ。
「でも地中は危険すぎる!
圧力も毒も――」
そのとき。
海里が、はっきりと言った。
「……蒼真、行って」
一瞬、全員が息を呑む。
「地上は、私たちが守る」
「……あなたなら、耐えられる」
蒼真は、振り返る。
海里の目は、
泣いていなかった。
だが、誰よりも多くの死を背負った目だった。
「……頼む」
蒼真は、静かに頷いた。
「……必ず、戻る」
地面が、蒼真を呑み込む。
闇。
圧力。
そして――脈動。
そこにあったのは。
巨大な影。
土の首の核――
巨大なツチノコ。
古代の神獣。
大地そのものの意志。
その眼が、開く。
《――来たか、人の子》
蒼真は、剣を構える。
「……虎永の分まで」
「……俺は、折れない」
地上では、
海里が仲間を率い、
必死に土偶の群れを食い止めていた。
彼女は叫ぶ。
「蒼真!!」
「……帰ってきて!!」
その声は、
地中深くまで――
確かに、届いていた。




