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神様誕生 ―神承者たちの覚醒―  作者: konatsu


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第6承 第7和【八岐大蛇 参腫 毒の首 バニー 後闘】

毒海が、吼えた。


瘴気が渦を巻き、空と大地の境界が溶け落ちていく。

紫と黒が混ざり合った世界で、時間の感覚すら歪み始めていた。


八岐大蛇・毒の首は、完全に“戦”の形へと移行していた。


毒蛇の首が裂ける。


それは“傷”ではない。

皮膚が花弁のように開き、内側からさらに巨大な器官が現れる。


無数の管。

拍動する毒袋。

空間そのものに毒を分泌する、生きた毒炉。


「――見せよう。

 これが我が真の姿

 《万毒ノ母胎ばんどくのぼたい》」


毒蛇の声が、もはや音ではなく環境そのものになる。


大地が腐り、

空気が溶け、

呼吸するだけで“死”が肺に染み込む。


バニーは思わず膝をついた。


視界が霞む。

意識が、叔母の記憶と現実の境界で揺れる。


「……くっ……」


毒蛇は嗤った。


「毒に耐えた?

 違うな。

 “毒に慣れただけ”だ。」


――その瞬間。


同じ時刻。

別々の戦場で、仲間たちもまた死線を越えていた。


雷鳴の中で、麗香が叫ぶ。


炎の嵐の中、美桜が歯を食いしばる。


そして――

その美桜が、バニーの“異変”を感じ取った。


「……バニー……!」


美桜は炎を天へ掲げ、神理を集中させる。


「届いて……お願い……!」


天が裂けた。


紫の空に、一本の“朱の線”が走る。


それは雷でも隕石でもない。

美桜の炎だった。


「《天照・遠照炎脈えんみゃく》!!」


炎は毒海を直接焼かない。

毒を“敵として否定”しない。


ただ、道を照らす。


その一筋の炎が、

バニーの背中を温かく包んだ。


「……美桜……」


バニーの胸に、力が戻る。


毒蛇が呻く。


「他の神承者……!

 干渉してくるか……!」



バニーは、ゆっくりと立ち上がった。


毒が体内を巡る感覚は、もはや“痛み”ではない。

それは――

血流のように、呼吸のように、当たり前の存在だった。


バニーは毒蛇を見据える。


「……ねえ。」


毒蛇が眉をひそめる。


「毒ってさ……

 “殺す”ためだけのものじゃないんだよ。」


一歩、踏み出す。


毒海が、今度は彼女を支えた。


「薬も、解毒も、抗体も……

 全部“毒”から生まれた。」


バニーの声が、芯を持つ。


「叔母さんは言った。

 “毒は選ぶ手に宿る”って。」


毒蛇の巨大な目が、初めて揺らぐ。


「……否……

 毒は世界を腐らせる……

 人の文明を……」


バニーは首を振った。


「違う。

 人が毒を“使い方を誤った”だけ。」



毒の霧の中で、

もう一度、叔母の声が聞こえた。


今度は幻影ではない。


『バニー……

 人はね、弱い。

 だから間違う。

 でも……』


声が優しくなる。


『間違いを“直そう”とする心があるなら、

 それはもう毒じゃない』


バニーの目から、涙が溢れた。


「……うん……」



バニーは両手を広げる。


毒海が応えるように、静まり返る。


紫の瘴気が、

彼女の周囲で“花”のように開いた。


毒蛇が後退る。


「……貴様……

 毒を……制御している……?」


バニーは静かに告げた。


「制御じゃない。

 “理解”しただけ。」


そして、宣言する。


「――《毒理・共生解放きょうせいかいほう》」


世界が、反転した。


毒海は“侵すもの”ではなく、

“守る膜”へと変わる。


毒蛇の身体が、逆に毒に侵食され始める。


「な……に……!?

 我が毒が……拒まれている……!?」



バニーは、最後の一歩を踏み出した。


美桜の炎が背を押し、

仲間たちの気配が、遠くで重なる。


「これは……

 毒で苦しんだ人たちの分。」


拳を振り抜く。


「そして……

 優しかった叔母さんの分!」


毒蛇の核心へ、

“浄化された毒”が突き刺さる。


毒蛇は、静かに崩れ始めた。


「……毒とは……

 恐怖では……なかったのか……?」


バニーは、優しく答える。


「恐怖は……使い方を知らない心が生むもの。」


毒蛇は、最後に――

安堵したように目を閉じた。


瘴気が晴れ、

毒海は跡形もなく消えた。


残ったのは、湿った土と、朝靄。


バニーはその場に座り込み、空を仰ぐ。


「……終わったよ……叔母さん……」


どこかで、

微笑む気配がした。


通信が入る。


「バニー! 無事!?」

美桜の声。


「……うん。

 ちょっと……疲れただけ。」


遠くで、仲間たちがそれぞれの戦場で戦っている。


八岐大蛇は、まだ倒れていない。

だが――


一つの首は、確かに沈んだ。


毒の首・完全撃破


毒は、

破壊ではなく、

理解と選択によって“力”となった。


そして、

一人神承者の愛が、

世界をまた一歩、救った。

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