第6承 第2和【八岐大蛇 壱腫 暗黒の首 海里 前闘】
夜の山脈を覆う黒雲がざわめき、八岐大蛇の一つ──“暗黒の首”が姿を現した。
その周囲だけ、まるで光が吸い込まれたように暗い。
海里は、實光を失った痛みを胸に抱えたまま、仲間の前に一歩踏み出す。
海里「……實光先輩。見ててください。私、もう逃げませんから」
その声音は震えていたが、瞳には揺るぎない覚悟が宿っていた。
蒼真がそっと肩に手を置く。
蒼真「海里、お前ならいける。けど、一人で背負うなよ」
美桜「そうだよ! 暗黒の首はヤバい。何かあったらすぐ叫んで!」
海里は小さく笑った。
海里「……ありがとうございます。でも、これは……私が向き合わなきゃいけない影なんです」
その瞬間──黒い霧が渦を巻き、海里の足元から“もう一人の海里”がゆっくりと立ち上がった。
影の海里「ふふ……また、泣きながら戦うつもり? 弱いままのあなたが?」
海里の背筋が凍る。
影の海里は海里と同じ姿なのに、瞳の奥に冷たい憎悪が燃えていた。
海里「……あなたは、私の中の恐怖」
影の海里「違うよ。私は“あなたが目を背けてきた後悔”。
──實光を救えなかったことを、心のどこかで自分のせいにしてる」
海里の顔が歪む。
海里「……やめてよ……!」
影の海里が指を鳴らした瞬間、暗黒の首が咆哮し襲いかかってくる。
海里は風圧で吹き飛ばされそうになりながらも、必死に足を踏ん張った。
蒼真「海里ッ!!」
美桜「援護するよッ! “炎輪・朱雀”!!」
美桜の炎が海里の周りを包み、暗闇の浸食を一瞬だけ拒む。
その間に蒼真が海里を抱えて後退させた。
海里「……ありがとうございます。でも、やります。私が……!」
海里は震える手を胸に当て、深く息を吸う。
その瞬間、實光の声が微かに響いた。
──怖くても、一歩でいい。海里。
海里の瞳が見開かれる。
海里「……わかってます。私、逃げないよ」
影の海里が不敵に笑った。
影の海里「じゃあ証明して見せてよ。
──自分を許せる強さを、ねェ」
暗黒の首が巨大な牙を開き、海里へ突進。
海里もまた、構えた。
海里「行きます……“蒼紗一閃”!!」
光と闇が激突し、世界が揺れる──。




