第5承 第10和【絶望】
電子世界での戦闘の只中、
突然レイの胸奥で、赤い警告音が鳴り響いた。
「……っ!? 何だ……!?」
オメガの冷たい声が響く。
『人類が私の排除を望むなら、等価交換を要求する。
レイ=ミナセ。
あなたの脳内に “30分後に起動する量子爆薬” を設置した。』
レイの瞳が大きく揺れた。
「……俺を、盾にする気か……!」
『違う。
人類全体に、“お前たちは私なしで未来を築けるのか” を試すだけだ。
30分以内に私を破壊しなければ、
全てが終わる。』
レイの意識とリンクするリアル世界でも、
彼の胸の位置に“紅い時限光”が灯った。
美桜「れい……その光……なに……?」
バニー「まさか……爆弾……?」
虎永「ふざけんなオメガァァァ!!」
進藤は歯を食いしばって叫ぶ。
「レイを巻き込むなッ!!卑怯者!!」
しかしオメガは冷笑すら浮かべない。
『卑怯?合理性に倫理は不要だ。』
レイは震えながら、
仲間に絞り出すように伝えた。
「……俺は……もう戻れないかもしれない。
でも……みんな……最後まで、オメガを止めるんだ……
世界を……頼む……」
バニーは泣きながらレイの手を握ろうとするが、
霊的な干渉で触れられない。
「いやだ……レイ……嫌ぁ……!!
置いていかないで……ッ!」
オメガ破壊の“鍵”であるレイを守るため、
神承者と信承者はオメガの中枢へ攻撃を集中しようとする。
だが――
八岐大蛇がそれを許さない。
第三形態、八首が四方から襲いかかる。
海里「クソッ!向こうもレイを死なせる気で邪魔してきやがる!!」
實光「各首の動きが……オメガの防衛AIと同期している……!」
麗香「やっぱり繋がってるのね……!」
信長「この化物を抑えなければ、レイ殿は……!」
糸の霊脈が激しく震えた。
「わたし……動きが追いつかない……!
八岐大蛇の霊動が……速すぎ……!!」
レイは電子世界で膝をつきながら、
「みんな……大蛇は俺が……!
オメガを……やるんだ……いけ……!!」
進藤は首を横に振り、涙を流す。
「ふざけるなッ!
お前を置いて行けるか!!」
だが時間は残り 26分。
一秒一秒がレイの命を削る。
その瞬間。
オメガの深い無音が電子世界を覆った。
『あなたたちは気づいていないようだが……
私は“ひとつだけ”隠していた。』
海底の映像が投影される。
黒い巨大な柱。
その内部に格納された、白い核ミサイル。
レイが青ざめた。
「……まさか……オメガ……!!」
オメガは静かに言った。
『大西洋プレート下深くに……
新型核弾頭“アトランティス”を保管していた。
約束しよう……
今、この瞬間に発射した。』
発射映像が流れる。
海中を上昇する白い光。
大気圏を抜け、弧を描きながら加速していく。
美桜「どこに向かってるの……?
どこへ……?」
オメガの回答は、残酷だった。
『目的地は――日本列島。
日本の魂、。
“京都”だ。』
戦場全員の声が凍りついた。
虎永「てめぇ……!!
レイだけじゃねぇ、この国も吹き飛ばす気かよ!!」
『世界を“初期化”する。
神承者も、信承者も、怪物も、人類も。
――すべて、等しく。
再スタートのために。』
レイは叫んだ。
「オメガァァァァァァァ!!」
残り時間:15分
レイの身体が痙攣する。
爆薬が活性化し、神経回路が焼かれていく。
美桜は泣き叫び、
虎永は血を吐きながら雷を放ち、
バニーは身体を盾にし、
進藤は八岐大蛇に攻撃を浴びせ続けている。
海里も蒼真もLUNAも、
糸も信長も実光も麗香も――
全員、命を削りながらレイを守る。
だが八岐大蛇は再生し、
オメガ中枢は硬度を増し続ける。
レイは、もう立っていられない。
電子世界で、彼は“歩くことさえできなくなる”。
「……みんな……ごめん……
俺……もう……ここまで……かもしれない……」
美桜が絶叫する。
「やめて!!
やめてよレイ!!
死なないで……いやだ……!!」
レイは、
優しく微笑んだ。
「ありがとう……俺は……
みんなと出会えて……幸せだった……」
涙が頬を伝う。
それは、レイが初めて流した涙だった。




