第5承 第5和【新たなる信承者】
新地上指令基地【YAMATO】に
世界中の叡智が集結し、信承者(安倍晴明・菅原道真・織田信長)の
三名が姿を現したそのとき――
糸は後方で、ずっと震えていた。
恐怖ではない。
胸の奥が熱く、痛く、破裂しそうだった。
八岐大蛇の咆哮が空を裂き、
世界が崩れようとしているというのに――
糸は、ただただ胸の高鳴りを抑えられなかった。
「……なんで……私……こんな……」
そのとき。
近藤實光(安倍晴明の末裔)が、
糸をじっと見つめた。
まるで千年前から知っていたかのような、確信の目で。
糸は戸惑いのまま問い返す。
「な、なに……ですか……?」
實光は静かに言った。
「――気づかないのですか。
あなたの“呼び声”に。」
◆ 卑弥呼の魂、覚醒の徴
糸の背後で、
不可視の“影”が蠢いた。
金色の霧が糸の周囲に降り始め、
まるで古代の巫女が舞うように彼女の髪が揺れる。
司令室がざわつく。
LUNAが息を呑んだ。
「……この神気は……古代……いや……もっと根源的……!」
桐生博士も震えていた。
「糸さん……あなた……まさか……」
近藤實光が告げた。
◆ 「あなたは――卑弥呼の直系の末裔です」
糸は膝から崩れ落ちそうになった。
「え……? 私が……?
そんな……ただの一般人で……」
天地信長が歩み寄り、静かに頷いた。
「いいや。
あなたの血筋は“日本の始祖”。
国家よりも古く、人類史の闇を照らしてきた力。」
式神麗香も続ける。
「あなたの右手……光っていますよ。」
糸が恐る恐る右手を見る。
そこには――
『信承』
と刻まれた、金色の紋章が輝いていた。
しかも、
信承者3名のものとは桁違いに大きく、深く、美しい。
糸:「……いや……いやだ……私……戦えない……
みんなみたいに強くない……
私は指示の確認しか……できなくて……!」
實光が糸の肩に手を置いた。
「卑弥呼は刀を振らなかった。
呪術も、戦術も使わなかった。
――彼女の武器は、“人の心を動かす力”だった。」
天地信長が続ける。
「同じだ。糸。
お前がMIKADOでやってきた仕事は、“人の声をつなぐこと”。
それこそが、人類に足りなかった第四の力だ。」
司令室の全員が、糸の方を向いた。
天皇陛下が、静かに言葉を紡いだ。
◆ 陛下の言葉
「卑弥呼の末裔よ。
どうか、我らの未来を導いてください。」
糸の瞳から涙が溢れる。
「私なんかで……
私なんかでいいんですか……?」
天皇は微笑んだ。
「“あなたでなくては”ならぬのです。」
◆ 信承者、「四柱」へ
近藤實光(陰陽・安倍晴明)
式神麗香(雷・菅原道真)
天地信長(武・織田信長)
そして――
糸(導・卑弥呼)
これで信承者は 四柱 となった。
天地信長が四人を見回し、言う。
「時代は――
神承者(神の力)
信承者(人の力)
そして世界の総力。
三つの柱で八岐大蛇に挑む。」
糸がしっかりと立ち上がり、涙を拭いた。
そして右手の紋章が眩しく輝く。
◆ 糸、初の“信術”発動
―― 卑弥呼の継承技
『天語』
日本全国、全世界のモニターが一斉に光る。
糸は震えながらも、
世界中の人々へ向けて言葉を発した。
その声は、古代の巫女の響きを帯び、
電波でも音声でもなく――
人の心そのものに直接届く言葉だった。
「お願い……
どうか、もう一度……
“人間を諦めないで”ください……!」
世界中の子供が泣き声を止めた。
兵士が拳を握った。
科学者が涙を流した。
指導者たちが目を閉じた。
糸は必死に叫んだ。
「私たちは弱い!
でも……弱いからこそ守りたいものがある!
だから――立ち向かえるんです!」
全世界の祈り、願い、叫びが
一本の光となって糸の背に集まる。
それこそが卑弥呼の力。
神でなく、武力でもなく――
人類の心を束ねる力。
天地信長が微笑む。
「これが最後のピースだ。
これで我ら “信承者” は完成した。」
◆ そして四人は――八岐大蛇戦線へ
糸が涙の中で頷き、立ち上がる。
「行きます……
卑弥呼の力で……皆さんを導きます……!」
天地信長が叫ぶ。
「信承者、出陣!」
實光が式神大軍を召喚し、
麗香が雷の結界を展開し、
信長が人類史最強の“布武陣”を構築する。
そしてその中心に、
糸の光が広がっていく。




