第4承 第5和【裏切り】
富士山麓。
かつて神話と科学の象徴だった巨大要塞《MIKADO》は、
いまなお煙を上げ、黒焦げの鉄骨を広げていた。
瓦礫はまだ熱く、
風が吹くたびに焦げた書類が空を舞う。
海里はその中心に立ち、
焦げた土を握りしめていた。
胸に残るのは──
最後に鷹宮総理が見せた、あの覚悟の横顔。
「……私が……もっと強ければ……」
震える海里の肩に、蒼真がそっと手を置く。
「海里。姉さんは……後悔なんてしない人だ。
お前たちを守れた。それが誇りだったはずだ」
虎永も拳を握りしめながら言った。
「……守れなかったのは、俺たちだ。
だから──今度は絶対守る」
その言葉に、美桜とバニーも静かに頷いた。
レイは瓦礫の中から《富嶽零式》の残骸を見つけ、
そこに残された量子メモリの断片を必死で繋ぎ合わせていた。
「……くそ……!
誰だ……誰がMIKADOを……」
画面にノイズが走り、やがてひとつの名前が浮かぶ。
“Mikado-Tech局長: 御影 隼斗”
レイは息を呑んだ。
「……嘘だろ……?
御影博士は……MIKADOの心臓そのものだぞ……!」
その声に、蒼真も振り返る。
「レイ。御影博士に会ったことは?」
「何度もある。
富嶽零式を共に調整した……
人格者で、温厚で……
MIKADOを世界最強の守りにすると誓った……」
画面が次々と復元されていく。
そこには──
三種神器統合プロトコルに“外部干渉ルート”を設置する御影の姿。
そして──
迦楼羅の量子波を“誘導”したログ。
海里が息を呑む。
「……御影博士が……迦楼羅を呼んだ……?」
レイは震える声で言った。
「呼んだんじゃない……
交信していた。“あらかじめ”だ」
レイの指が止まる。
「……これ……は……?」
画面に現れたのは、恐るべき研究レポート。
《神体量子融合プロジェクト:Project KALRA》
──神々は “情報体” である。
──人類は“未完成の生体データ”である。
──人類を完全体へ進化させるには、
一度 “世界の構造を初期化” する必要がある。
「そんな……世界をリセット……?」
美桜が震えながら呟く。
「つまり……御影博士は……
世界を壊して造り直そうとしたの……?」
レイは歯を食いしばる。
「違う……御影博士は正気じゃなかった。
迦楼羅の量子波に触れた時から……
あいつは“神の声”を聞き始めたんだ」
海里は悟る。
「──迦楼羅に魅入られたのね」
虎永が刀を握る。
「じゃあ……MIKADOを壊した理由は……?」
レイは答えた。
「簡単だ。
MIKADOは世界を守る装置。
だから、最初に壊すべきだったんだ。
新世界を作るために。」
全員の胸に怒りと悲しみが溢れた。
レイが画面の最後のファイルを開く。
そこには、黒い瞳の御影博士が映っていた。
「やぁ、神承者諸君。
MIKADOは……世界を守るには強すぎた。
壊さなければ、世界は“更新”されない」
蒼真が怒りで槍を震わせた。
「てめぇ……!!
姉さんを殺したのか……!」
御影は微笑む。
「安心したまえ。
君たちもすぐに“正しい世界”に案内する」
背後に──黒炎。
画面に映った影は、もはや人ではなかった。
「……御影博士……
迦楼羅と……融合したのか……?」
レイの声が震える。
海里は草薙剣を握りしめる。
「……許さない……
あんたの“進化”なんかに……
世界は渡さない!!」
画面の御影博士が言った。
「来るといい。
私は “天頂の神殿”で待っている。
──迦楼羅の力と共に」
そして画面は切れた。
MIKADOは消えた。
だが新拠点がある。
《大和 YAMATO(第二中央指令基地)》
そこへ、神承者たちが集まった。
レイが言う。
「目的はひとつ。
御影博士を止め、
迦楼羅を倒し……
三種神器を統合しなおすことだ」
蒼真が槍を突き立てる。
「姉さんの遺志は……俺たちが継ぐ」
美桜が手を握る。
「もう……誰も死なせない」
バニーが吠える。
「ケジメつけに行くわよォ!」
虎永が刀を抜く。
「おれ……絶対に負けない」
LUNAが静かに頷く。
「歌で……魂を守る」
そして海里が草薙剣を掲げた。
「MIKADOの想いは……
私たちの中に生きてる。
行こう──みんなで!」
神承者たちは、迦楼羅と御影博士が待つ“天空の神殿”へ向けて出撃した。




