第2承 第7和 【未来を託す】
全世界に向けた放送用、
地下施設の巨大ホールは静まり返っていた。
そして――総理大臣・鷹宮澪がゆっくりと歩み出た。
白いスーツが光に包まれ、緊張で息を呑む全神承者たち。
彼女は深く一礼し、しばらく何も言わなかった。
その沈黙が、かえって重く人の心に刺さる。
やがて、彼女は壇上から世界に語りかけた。
「日本国総理大臣、鷹宮澪です。
ただいまより“神承者”の皆様が、
高天原へ向けて旅立ちます。
今、私たちが立つこの国は――
未曾有の危機のただ中にあります。
ですが……
私は、希望を失っていません。
なぜなら、
ここに立つ皆様が、この国の“最後の光”だからです。」
澪の声は震えていなかった。
強く、真っ直ぐで、清らかだった。
だが瞳には、揺らぎがある。
「あなた方は、特別に選ばれたわけではありません。
誰かより優れているわけでもない。
誰かの代わりになれるわけでもない。
ただ――
“覚悟”を持った人間です。
どの時代も、この国を動かしてきたのは、
その覚悟を持った者たちでした。」
カメラが海里を映す。
海里は胸元をそっと握りしめる。
澪は続けた。
「そして、私はひとりの姉として――
蒼真。あなたにも言わせてください。」
蒼真が息を呑む。
全世界がその瞬間を見ている。
「あなたが選ばれたことを誇りに思います。
弟としてではなく、
一人の日本人として。
あなたの歩む道に、私は一切、迷いません。」
蒼真は涙をこぼし、軽く頭を下げた。
澪はもう一度、全神承者たちに目を向ける。
「皆さん。
この国は、幾度も危機に立たされてきました。
それでも消えなかったものがあります。
それは――
“和をもって、とうとしとなす”
という心です。
争いよりも、調和を。
憎しみよりも、慈しみを。
孤独よりも、つながりを。
その精神こそが、日本という国を支えてきた。」
言葉がホールに染み込む。
誰もが息を忘れていた。
「あなた方は戦士ではありません。
破壊するためではなく、
守るために選ばれた人々です。
どうか、
あなた自身を、どうか信じてください。
そして――
必ず帰ってきてください。
この国は、あなた方の帰還を信じて待っています。
私は総理として、
ひとりの人として、
あなた方全員の無事を祈ります。」
最後に、澪は深々と頭を下げた。
「行ってらっしゃい。
日いづる国の未来を託します。」
その瞬間――
神承者たちの胸に、それぞれの決意が燃え上がった。
そして光が降り注ぎ、
彼らは高天原へと旅立っていく。




