第3話 もふもふってなんですか?
もふもふってなんですか?
「まあ、とにかく行くところがないのなら、わたしのお家にきなよ。そんなに落ち込まないで。ね、どんまい、どんまい」
ぷららはわたしのかたをぽんぽんと叩いて、そう言いました。
わたしは記憶をなくしていました。
わたしのあたまの中はからっぽになってしまっていたのです。
からっぽといってもめいという自分の名前は覚えているし、言葉も喋れますし、文字も書けます。
でも、自分の過去をわたしは失っていました。(どこかに落っことしてしまったみたいです)
そのことは、……、やっぱりとても悲しかったです。(泣いてしまうかと思いました)
「まあ、そのうち思い出すよ。忘れてしまったことはしょうがない。しょうがない」
ぷららはわざとらしく高い声で、きゃきゃと、ふざけて笑って、とっても明るい雰囲気で言いました。(きっとわたしのことをなんとか元気にしてあげようって、ぷららは思ったのだと思いました)
「どうもありがとう。ぷららちゃん」
と少しだけ泣きながらわたしは言いました。(我慢していたのですけど、ぷららの優しさにふれて、泣いちゃいました)
「泣かないで。私まで悲しくなっちゃうよ。ね。笑って。めいちゃん」
とぷららはまるでお手本のようににっこりと笑って言いました。
「うん」とわたしは笑いながらぷららに言いました。
わたしは今、うさぎの『もふもふ』のぷららと一緒に透き通るような高い青色の空を見ながら、緑色の大地の上を歩いていました。
(もふもふというのは、ぷららたち月の村に住んでいる動物のみみや動物のしっぽの生えている人たちのことだそうです。ぷららが教えてくれました。ぷららが「めいちゃんももふもふだよ」と言うように、動物のみみと動物のしっぽのある今のわたしも、どうやら、もふもふのようでした)
そこには白い月が浮いていました。
そんな孤独なひとりぼっちの月を見て、まるで今のわたしみたいだなって、そんなことを思いました。




