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第32話 光の神、嘲りと真実を告げる

白光に包まれし広間にて――神との対話は終わらぬ。

語られる真実は、救済か、それとも絶望か……。

そこは、天井も壁も床も白で統一された広間。

淡く光を反射する大理石の床に、ただ一つ、拳大ほどの光がふわりと浮かんでいた。

それが――この世界の神。


「いや、そんなに驚かないでよ」

軽い口調とともに、光がくるりと揺れる。


「はぁ!?」

思わず声が裏返った。

人の人生をなんだと思ってるのか……あまりに無責任な発言に怒りが漏れる。


「――ま、とりあえず続きを話そう」

さっきまで軽やかに瞬いていた光が、声に合わせて静かに落ち着いた。


「君の中でも一番苦しんでる子は、要領が悪くて人付き合いもうまくない。

 悪気なくふとした発言で人を困らせたり……変なところで空気読めないんだよね」


(いや、それ完全に私のことですよね……?)

思わず目を細める。


「本当はもっとあるけど……可哀想だから言わないでおくよ」

光が小さく瞬いた。

「それは全みさきに共通している性格だ。環境によって出方は違うけど、根は変わらない」


(ぐっ……)


ツッコミたい気持ちをぐっと抑え、耳を傾ける。


「苦しんでる君はさらにメンタルが弱くて、いつも間違った選択肢を選んでしまうんだ……」

淡い光がかすみ、声にはわずかに陰りが差した。


(私もメンタル弱い方なんだけどな……)


「君は図太い方だよ」


(はやっ!? 思考読み取り即ツッコミ!?)


「世間的に見れば繊細な部類に入るのかもしれない。でも――他の君たちと比べたら、ね」


(……他のみさき達ってどんだけ豆腐なの?)


「なんか、やっぱりずれてるよね。他の君と違って……考え方が一歩外にある」


神は少し声を落とし、言葉を選ぶように続けた。


「結晶を壊すには“過去を受け止める”ことが必要だ。

 これまでは君自身が体験した過去だった。けれど――今回の島は違う。

 平行線世界の君が、色んな感情から逃げて小説に籠もったことで生まれた新しい結界だ。

 だから今の君には体験していない過去を、代わりに受け止めなければならない」


「でも、それって根本的な原因が解決しなければまた新しい結晶が作られるんじゃ……」


「!」

光が一瞬、脈打つように激しく揺れた。

沈黙が落ちる。


「……君は本当に帰りたいのかい?ここなら皆、君をちやほやして救世主扱いだよ?」


「美人で若い体のままちやほやされて、イケメンに囲まれて、うっふんあっはん……なんて、そりゃ楽しいかもしれませんけど」


「現実に戻っても、薄給だし……貯金もないし……美人でもないし……彼氏もいないし……友達もいないし」


(あれ?こうやって並べると、“ないないセット”のフルコースだな……言ってて悲しくなるわこんなの)


「……まぁ、困ってなくはないですけど。だからって悲観してもしょうがないですし」


「疲れたら寝て、たまに美味しいもの食べて……。

それだけで幸せになれるはずなのに……この体じゃ、それができないんです」


みさきの言葉に、光がわずかに揺らいだ。


「なーんだ。そんなことなら調整してあげるよ」

神は軽く笑う。


「いやいや、そういうことじゃなくて!」

思わず声を荒げる。

「“できる・できない”の話じゃないんです。……当たり前にできるはずのことが、私にとっては一番大事だったのに」


光がすっと静まり返る。

その場の空気が、ほんの少し重くなった。



「……正直に言うとね」

神は声を落とし、淡々と続けた。


「君が元の世界に帰れるかどうかは、まだわからない。

 もしかしたら……帰れないかもしれない。

 でも――この世界を守るためにも、結界のことは、君に頼みたい」


(ん……? そういえば聖剣も――)


脳裏に、あの時のやりとりがよみがえる。

“……選択を間違えると、お前、多分帰れないぞ”


(……そうだ! あの時も“帰れない”って……!)


みさきははっと顔を上げる。

「神様、そういえば……聖剣が――」


光が一瞬、脈打つように強く揺れた。

静寂が落ちる中、みさきの言葉は途切れ――


――つづく。



神託の余韻が残る中、封じられし聖剣の心は暴かれるのか。

想いは刃か、それとも救いか――次章にて明らかとなる。

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