表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

第2話 神聖なる儀式(と勘違いされました)

これは、かつて我が手で書き殴った“世界の理”。

触れてはならぬ、語ってはならぬ、

決して開いてはならぬ――設定ノォト♥️

「では、行きましょうか」


ミステリアスな見た目に反し、人懐っこい笑顔を見せるライルに、私――みさきは思わず聞き返した。


「徒歩……ですか?」


まぁ、移動手段は馬とか馬車とか魔法とかをイメージしていただけに、拍子抜けというか、肩透かしというか。


「ええ、すごく近いんですよ。歩いて十五分くらいですかね」


「え?!」


驚きの声を上げると、ライルは得意げに胸を張る。


「『始まりの地インフィニティ』に『パンナコッタドンナコッタ町』その間に『ゼブ王国』があるんですが、ここまで近いのは珍しいと思いますよ」


「そうですか……(なんかごめん)」


なんて返したらいいかわからず、とりあえず相槌を打つ。


「あと、先ほどはギゼル様が失礼しました。信仰心が強いのもありますが、ギゼル様はレナ様が紡いできた物語の熱心な……信者と言ってもいいくらい、関連書物を読み漁ったりしてるんですよ」


「へぇ……(世に出していない黒歴史小説の熱狂的ファンが、まさか小説の中にいるなんて……)」


なんというか、気持ちが追いつかない。


「もうすぐ着きますよ」


ライルの声に、私はハッと意識を現実に引き戻される。パンナコッタ町の設定を思い出そうとしていたのだ。最初の頃はなんか色々破綻してた気が……。そんなことを考えていた、その時だった。


「――あいた!」


突然、頭に衝撃が走る。あまりの痛さに悶絶する私の目の前には、一冊のノートが落ちていた。


「大丈夫ですか!?」


心配そうに駆け寄ってくるライル。いや、護衛の意味……。


しかし、私の視線はそのノートに釘付けだった。表紙に書かれた文字が、否応なしに目に飛び込んでくる。


『設定ノォト♥️』


「いやいやいや……これはおかしいでしょ……」


私が呆然としていると、ライルがそのノートに触れようとする。咄嗟に体が動き、それをガードした。


「救世主様……?」


訝しげなライルの視線に、わざと芝居がかった声色で告げる。


「これに触れてはいけません……!」


「!」


ライルは一瞬息を呑んだあと、真顔で頷いた。緊張感のある声で尋ねてくる。


「……まさか、これに触ると封印されてしまうとか?」


(うん、なんでそんなに食い気味で聞いてくるの? あと、ピュアで助かった)


「そうそうそう! これは一般人が触れたら、とても危険なのです!」


私は勢いのままノートを拾い上げ、そーっと中身を確認。そして光の速さで懐にしまった。


やっぱり……これは色んな意味で封印していた、この世界の設定ノォト……いや、ノート。


涙が出そうになるのをこらえて、私は天を仰いだ。


隣を見ると、ライルは――

私のポーズを真似していた。


「……ライルさん?」


「これは結界を破る前に行う神聖なる儀式ですよね?」


そう言ってまた彼は天を仰ぎ、目を瞑る。


「……そうです。神聖なる儀式のポーズなんです」


もう苦し紛れである。私はそう言って、再び天を仰ぎ、しばらく目を閉じて現実逃避していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ