表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/41

第11話《封印解放者(キーホルダー)》──禁断の鍵と絶望の研究者

封印とは何か。

解くとは、壊すことか。それとも導くことか。


鍵を持たぬ者は、ただ扉の前で夢を見る。

だが、彼女は違った。夢を抱いたまま、叩き壊されたのだ。


封印の真理に魅入られた少女リサーチャーと、触れるだけでそれを砕くブレイカーの出会い。


それは──運命の歪みの始まりだった。

「先ほどは驚かせてしまってすみません。ゼブ王国第一騎士団、第二部隊の副隊長を務めております。ライルと申します」


「えと、封印を解いて回ってます(尻拭い)みさきです」 ぺこりとお辞儀する。


するとルルが、いきなりスイッチが入ったように叫んだ。 「本当なんですか!? わたし、物心ついてからずっと封印について研究してきたんです! 誰にも解けなかった謎をこの手で解くことを、生き甲斐にしてきました!」


「直接、その場面を見られるなんて……光栄です! でも、少し悔しいですね……。 えっと、次は聖獣の森ですか? そこが一番近いですよね!今からいきますか?」


「あー……」 ライルとみさきは、顔を見合わせた。


「申し訳ありません、ルルさん。実はその“聖獣の森の封印”、さっきみさき様がもう解いてしまいました」


「そ、そうですか……。ちなみに、お聞きしますがどうやって解くんですか? 特殊な呪文を? 聖剣みたいな武器を使って……?それとも長期的な儀式を行うのでしょうか?」


黒淵メガネをくいっとしながら、食いぎみにみさきにぐいぐいと近づくルル。


(熱量がえぐい……)


「特に何かするわけではなくて……こう、触るとパリンって割れます」


「???」


ルルは一瞬ポカンとしたあと、少し考え込み真顔で言った。


「つまり、みさきさん自身が、封印を解く“鍵”そのものだということですか?」


こくりと、みさきがうなずく。


「……そうですか。それじゃ、いくら研究しても答えにたどり着けないわけですね」


明らかにがっかりするルル。


「ルルさん……?」


「ごめんなさい……わたし、一緒には行けません」


「えっ?!」


あまりの急展開についていけない。その言葉にライルもみさきも思わず声を上げた。ルルはキッとこちらをにらみながら言う。


「わたしのやってきたことって、なんだったんですか? 封印を解いて、その場所に眠ってる人を助けるために――毎日、必死で…… 他の研究者たちも皆そうです……!」


その目には、悔しさと涙がにじんでいた。


(ほんとごめん……! 土下座で許されるなら何回でもする……!!)


静まり返った空気の中、ルルは小声で何かを呟いていた。 「……解く鍵が……どうして……どのように……」 その声は、まるで呪いの呪文のようにも聞こえて…恐怖さえ感じた。


無理強いはできないが、さすがにここで「さようなら」というわけにもいかない。


『あの!』 みさきとルルの声がハモった。みさきがルルにどうぞと促す。


「やっぱり一度、封印を解くところを一緒に見てみたいです……! それで、自分を納得させます!」


(お、おう……)


こうして、ルルが「一度見て納得したいから」という理由で旅に加わることになったが、不安しかない。



封印を追い、研究に人生を捧げた女性。

そのすべてを、一瞬で終わらせる存在との遭遇。


嘲笑か、祝福か。

“選ばれなかった者”の叫びは、誰にも届かない。


……届かなくても、観測はできる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ