プロローグ:小説を哲学する
できるだけぼかしますが、若干の下ネタが出ます。苦手な方はお控えください
世界には小説が溢れている。
今ではどんな人でも小説を作れてしまう。
かくいう僕も小説を書く1人だ。
僕が小説を初めて読んだのは確か小学2年生の時だった。不思議なものだと子供ながらに思った。世界はひとつしかないのに、小説だと世界がいくつもかある。それから僕は、ひたすらあらゆるジャンルの小説を読み漁った。
そんな生活を送っていたのからか、僕が小説を書くことを決意したのは、早くも小学五年の時だった。その当時書いていたものは酷く拙いものだったがひたすら楽しかったのを覚えている。世界を疑似体験する、世界を創作する。それが僕には心地よくて勉強よりもゲームよりも楽しかった。
あれから時が経ち、僕は高校生になった。部活は小説研究部。この高校には文芸部の他に小説に特化した部活がある。もちろん僕がこの高校を選んだ理由だ。とは言っても部員1人で廃部寸前らしいが...
まぁ静かな方が僕からしたら好都合だ。
長い入学式やら説明やらが終わり、やっと部活ができることとなり、向かった。
唯一の部員、2年生の先輩はもう作業をしていた。
「あの、今日から入部した浅葱 古都です。本日からよろしくお願いします。」
そういうと先輩はこちらを向いた。」
「あぁ。先生から聞いたよ。物好きがいたものだね。初めまして、泡沫 ありすだ。よろしく。」
そう自己紹介した先輩は、目立ちの整った、だけど全体的にぼさっとした、いかにも書生といった出で立ちの人だった。
「ところで、ことこと君、君がどんな人か知るために1つ質問したいのだが」
「ことこと?」
「あぁ、君のあだ名だよ。悪くないだろう?」
「ものすごく違和感はありますけど、まぁ好きに読んでください。ところで質問とは何ですか?」
「君は1つの小説で情欲に駆られることは出来ると思うか?」
「えっ?はい?」
何言ってんだこの人。
「分かりずらかったか。要は、1つの小説をなんの面識もない男女が読んで、読み終わったあと性的行為をしたくなるかと質問したのだ。」
「えっと、その、な..何を言ってるんですか?」
「何って、ここは小説研究部だよ。小説関連を深堀りし、自己の小説を高めるそんな部活だよ。ちなみに私は《小説哲学》と呼んでいる。」
どうやら僕は大変な失敗をしたみたいだ。
「で、どっちだ?」
「あ、えっと、限りなく不可能に近いと思います。読んだだけでそんな...」
「そうか。私は可能だと思う。よし、今日の議題はそれにしよう。まぁ立って話すのもなんだし座りなよ。」
「はい」
今思えばよく調べなかった僕の非だ。
だけど"自己の小説を高める"その言葉に僕は少し興味が湧いた。
やってみるか、小説哲学。