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人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜  作者: 犬型大


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いざダンジョンで実戦訓練!4

「はっ! リュードさんは一体何者なんですか!?」


 放心状態から正気に戻ったエミナがリュードの姿を見て後ずさる。

 普通の人は竜人族なんて見たことないだろうから反応してしまうのは仕方ないのかもしれないけどちょっとだけショックだ。


「俺が何者か……」


 リュードがズイッとエミナの前に行き、膝をついて顔を近づける。


「知ってしまったらもう後戻りはできないがそれでもいいか?」


 エミナの顎に手を添えて、軽く持ち上げて目を合わせる。


「よ、よぐないですぅー!」


「あっ、ごめん! ごめんって、痛い!」


 後ずされたことに傷ついたので軽い仕返しのつもりだったのに効果がありすぎてしまった。

 まだパニックから抜け出していないエミナはボロボロと大粒の涙を流して泣き出してしまった。


 拗ね顔のルフォンに思いっきり背中を叩かれてしまった。


「何やってるのリューちゃん!」


「ごめんなさい……」


 つい出来心でやったイタズラで女の子を泣かせてしまった。

 村以外の人にこの姿を見せたことがなかったので、そんなに自分の見た目が怖いだなんて思いもしなかった。


 さらには近い距離で顎クイまでしてみせたことにルフォンはまた怒っていた。


「エミナちゃんは女の子なんだから泣かせちゃダメでしょ! あと距離が近すぎるのもダメ!」


 リュードは大人しくルフォンの説教を受け入れる。

 自分が悪いのだからしょうがない。


 リュードを怒らせないようにと頬を膨らませるようにして泣くのを我慢しているエミナは見てしまった。

 部屋の真ん中、きらめく魔力の粒子が集まって魔物の形を形成していくのを。


「あ、あれ!」


 エミナが声を出すまで気づかなかった。

 リュードたちが見た時にはそれはもう魔物になっていた。


 部屋のど真ん中に現れたのは巨大なクマ。

 おでこから頭の上を通り、背中、尻尾の先まで太い白い線が入っている。


 ホワイトラインベアという魔物である。

 リュードが昔戦ったツキベアグリーというクマの魔物よりもかなり格下の魔物になる。


 けれど初心者が入るようなダンジョンのレベルからするとふさわしくない強さを持っている。

 頭を振ってボヤけた意識をハッキリさせたホワイトラインベアはリュードたちを見つけて向き直る。


 顔が険しくなり、牙を剥いて唸り出す。

 完全にリュードたちを敵とみなしている。


「これは……ボス部屋だったのか」


 そんな予感はしていた。

 ボス部屋。読んで字の如くダンジョンの最奥にあるダンジョンのボスがいる部屋である。


 不思議な部屋で一度足を踏み入れると勝手に扉が閉まり、ボスを倒すか入ったものが死ぬかしないと開かないなどという危険な場所なこともある。

 何もいないのでおかしいと思っていた。


 おそらくボスも再構築されていたのだ。


「待って」


 剣を抜いて構えたリュードの前にルフォンが出た。


「……私にやらせて」


 ルフォンが今抱いている感情が何なのかルフォン自身も分からなかった。

 だがルフォンの心臓は大きく鼓動していた。


 目の前にいるのはツキベアグリーではなく、ルフォンもあの時の子供ではない。

 それなのになぜかあの時のことを思い出してまう。


「私がやらなきゃ」


 ルフォンのただならない様子にリュードもうなずく。

 ツキベアグリーに襲われて以来ルフォンはクマが苦手だった。


 村の周辺にはツキベアグリーよりも弱い種類のクマがいたけれどどうしてもルフォンには戦う勇気が出なかった。

 いつかはこの恐怖にも立ち向かわねばならない。


 いつまでも怖いと思っていられない。


「分かった。だけど危なそうなら何と言われようと助けるからな」


 リュードの方を見ずにナイフを抜きながらルフォンはうなずき返す。

 大きく息を吸い込んでルフォンは駆け出した。


 真っ直ぐに突っ込んでくるルフォンに合わせて大きく口を開くホワイトラインベア。

 直前でルフォンが跳躍。体をピンと伸ばして器械体操さながらに回転してホワイトラインベアの真後ろに着地する。


 ホワイトラインベアが振り返った時にはルフォンはさらに横に回り込み、ナイフで脇腹を切り付けた。

 皮が浅く切り裂かれて血が滲む。


 ダメージらしいダメージはではないが傷は傷。

 チクリとした微妙な痛みにホワイトラインベアに苛立ちがつのる。


 今度こそはとルフォンを正面に捉えて太い腕を振り下ろす。

 しかしホワイトラインベアの行動はルフォンよりもワンテンポ遅い。

 

 体勢をしっかりと整えていたルフォンは腕を難なくかわして逆の脇腹を切りつける。

 ホワイトラインベアとルフォンの相性は互いに悪い。


 ルフォンは武器がナイフなのもあって速度や手数を重視した戦い方になっている。

 ホワイトラインベアに致命傷を与えるにはルフォンの攻撃力では有効性が薄い。


 ホワイトラインベアは図体がデカく速さに欠けるが、その分力が強くダメージが通りにくい体をしている。

 ルフォンに対して一発は致命傷となり得るけれどルフォンの速度を捉えきれない。


 互いが互いに対して大きな決め手がない。

 しかし今はまだルフォンは様子見の段階である。

 

 もう少し踏み込んで攻撃を加えたいけれど一撃もらうと危険だから相手の攻撃、呼吸、動きや固さなんかを観察していた。

 常に動き回り、正面に立つことはないようにする。


 ホワイトラインベアはルフォンを段々と捉えられなくなっていき、切り傷が増えていく。


「わあ……ルフォンさんすごい……」


 エミナが見惚れるのも無理はない。

 ルフォンはホワイトラインベアを翻弄して手玉に取っている。


 決め手はなくともあのままボロボロになるまで攻撃を続ければホワイトラインベアも倒せるかもしれないとリュードは思った。


「こっちだよ」


 もはやルフォンの動きについていけていないホワイトラインベアが完全にルフォンを見失った。

 ホワイトラインベアは真後ろに回り込んでいるルフォンに全く気づいていない。

 

 グッと上半身をひねって勢いをつけ、ホワイトラインベアの右の後ろ足を切り裂いた。

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