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人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜  作者: 犬型大


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苛烈なスタート1

 特に期待はしていない。

 約束だから冒険者学校に通うのだし問題さえなければそれでいいと思っていた。


 けれど初日から気分は最悪だった。


「あれ、あいつあの時の獣人じゃん。隣のかわいこちゃんもあれ獣人だったのか」


「へぇー、あんま獣人とかないわって思ってたけどあの子ならアリじゃね?」


 もう2度と会うこともないと思っていた。

 ツミノブに入るときに人のことをデカい話し声で獣人獣人と言ってくれた馬鹿どもが冒険者学校にいた。


 リュードは身長も高く目立つし、ルフォンも今回はフードをかぶっていないので周りの目をよく引きつけた。

 勝手にあるとかないとか、また獣人だの聞こえる音量で会話するものだからルフォンだけじゃなくリュードも苛立っていた。


「静かに!」


 ボコボコにして窓から投げ捨ててやろうか。

 我慢が限界を迎えて実力行使に出る前に教師が来てくれて助かった。


 もちろん助かったのは馬鹿どもの命である。


「私はキスズ、元シルバーランクの冒険者だ。君たちの戦闘訓練の授業を担当する」


 目つきの鋭い、茶髪の短髪の男性。

 元からなのか威厳を出したいのか険しい顔つきに教室が静かになる。


「まずは君たちの実力を見ておこう」


 腰に差した剣を触り、教室を見回しながらキスズがニヤリと笑う。


「訓練場に行くんだ」


 キスズの指示で訓練場に向かう。

 いきなりのことに生徒たちは動揺を隠せない。


 訓練場に着くと早速キスズが剣を抜いた。


「今から互いに戦ってもらうわけだが、俺に挑戦したいという奴がいたら前に出ろ。受けてやる。俺を認めさせることができたら戦闘訓練の授業を合格とし、今後は出なくても良し。もし仮に俺に勝つことができたら優秀点も付けてやろう」


 生徒たちにざわつきが広がる。

 成績優秀で卒業するためには優秀点というものが必要だった。


 各授業を優秀な成績で修めれば優秀点というものがもらえて、それが一定以上卒業時に持っていると成績優秀での卒業になるのだ。

 ルフォンに目配せして、挑戦しようと意図を伝える。


 リュードが前に出ようとしたよりも早く1人の生徒が前に出た。


「僕が挑戦してもよろしいですか?」


 それはリュードたちのことをいじっていた馬鹿どもの1人であった。

 中途半端な長さの金髪、雰囲気イケメン、高くもなく低くもない身長。

 

 見れば見るほど鼻につく。

 嫌いというフィルターも多いに関係あるのだがちょっと微妙なラインの容姿であることは否めない。


「もちろんいいさ」


「サンセール・オライラオン、お手合わせ願います」


「あー、おう、いつでもこい」


 サンセールの武器はごく普通の剣。

 リュードの目には構えも普通で特別強そうには見えない。


 キスズはサンセールが構えても腕を上げないでダラリと下げたまま興味なさげにサンセールを見ている。


「行きますよ?」


 その様子にサンセールが苛立つ。


「いつでも来いと言っているだろ。戦場ではいちいち自己紹介もしないし相手が構えるのを待っていることもないんだぞ」


「分かりました!」


 感情を隠すこともなくムッとした表情のサンセールがキスズに切り掛かる。


「はっ!」


 リュードにはサンセールの剣の振り下ろしを見て分かる。

 あいつは強くない。


 偉そうに前に出てきたと思えば飛んだ拍子抜け。

 キスズは限界までサンセールの剣を引きつけ動いた。


 サンセール手を叩いて剣を落とさせ、素早く腹に蹴りを入れた。

 特別早い動きではなかったけれど無駄が少なく、サンセールの実力なら何をされたのかよく分かっていないだろう。


 蹴りは完全に決まった。

 二転三転と後ろに転がったサンセールは腹を抱えたまま起き上がれない。


 もうサンセールに戦闘継続の意思は見られない。


「不合格」


 冷たくキスズが言い放つ。

 サンセールの仲間たちにサンセールを医務室まで運ぶように言いつける。


 リュードが相手していたら蹴りを入れて、顔面にも一発入れていたのでずいぶんと優しい終わらせ方である。

 ましてや戦場ならサンセールは今頃物言わぬ死体になっている。


「他には?」


 サンセールがあっさりやられたのを見て、一気にみんなの挑戦する気が削がれてしまった。

 さすがシルバーランクの冒険者は冒険者学校に通うような駆け出しには負けるつもりがないようだ。


「はい」


「おっ、2人もいるか」


 他にいようが前に出るつもりだった。

 リュードとルフォンが軽く手を上げて一歩前に出た。


 元々目立っていた2人が前に出たので生徒がさらにざわつく。


「どっちからやる? まあ男の方から来て、俺の体力でも削ればお嬢ちゃんにもチャンスぐらいあるかもしれないな」


「……私が行く」


 あの教師、死ぬかもしれないなとリュードは思った。

 隣に立つルフォンが怒っているのをリュードは感じている。


 村では互いの性別は尊重する。

 男女で分けることはあっても見下して差別することはない。


 それにルフォンだって村では相当な実力者であってプライドもある。

 キスズは少し火をつけてやるぐらいの気持ちで軽く言ったが、ルフォンにとってひどく侮辱されたように感じた。


 ルフォンだってただ守られるだけの存在ではない。


「おっ、お嬢ちゃんが先かい?」


 ルフォンが怒っていることを察せないキスズは余裕の態度を崩さない。


「行くよ」


「おっ、おっ?」


 ナイフを抜き様に距離を詰めた。

 慌てて剣を構えようとしたが間に合わず何かを察知してキスズは後ろに飛び退いた。


 正しい判断だ。

 キスズが腕を持ち上げようとしていたルート上をルフォンのナイフが切り裂いた。

 

 キスズの行動を先読みしての攻撃。

 剣に手をやることを予想して先回りして切り付けていたのである。


 回避行動も取らないであのまま腕を上げていたら手首から先は無くなっていた。

 結果は空しい空振りに見えるけれど、空振りが何を狙っていたのか分かっているキスズの顔から余裕が消えた。


 しかし気を引き締めるには遅かった。

 かわされて終わりになんてしない。


 ルフォンはさらにキスズとの距離を詰めていた。

 突き出されたナイフを剣で防ぎ、火花が散る。


 ナイフは1本ではない。

 素早く繰り出された2本目の攻撃を回避しようとしたがかわしきれずに頬が浅く切れる。


 続けて蹴り。

 太ももにクリーンヒットしてキスズの顔が痛みに歪む。


 そして蹴りから戻した足を軸にして回し蹴り。

 キスズが手でルフォンの足を受け止めるがそれで止まるほど甘くない。


「ぐっ!」


 衝撃を受けきれず手ごと胸に回し蹴りが当たる。

 後ろに倒れるキスズにチャンスとばかりにルフォンが迫る。

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