↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人と希望を伝えて転生したのに竜人という最強種族だったんですが?〜世界はもう救われてるので美少女たちとのんびり旅をします〜  作者: 犬型大


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/622

最後の力比べ9

「……くそっ」


 リュードは気を失っていなかった。

 けれど体は動かず青い空をただただ眺めていた。

 

 対して村長は珍しく感情に突き動かされるままに手を突き上げて歓声に応えていた。


「あっ……」


「やられたな」


 倒れたまま動けずにいるリュードのことをヴェルデガーが覗き込んだ。

 ヴェルデガーが手を伸ばしてリュードの体を治療してくれる。


「……悔しいか?」


 少し体が動くようになったリュードはたまらずに両手を目に押し当てた。

 涙が出てくる。


 悔しい。

 全力を出して負けたから納得できるとか清々しい気分になるとかそんなことなかった。


 負けたことがただただ悔しくてリュードは涙を流していた。

 全力を尽くしたからこそ悔しい。


 戦いを思い返してもっと良い判断、もっと良い動きができたのではないかと考えてしまう。


「その気持ち……忘れるなよ」


「うん……俺、強くなりたい……」


 これまでリュードは大きな挫折を味わってこなかった。

 本気で挑んで本気で負けた。


 村長はリュードの前に大きな壁として立ちはだかったのである。

 悔しさを覚えるのならきっとリュードはまだ伸びることができるとヴェルデガーが思った。


 折れるのでもなく、納得いくのでもなく負けたことに悔しさを感じて、それを次へのバネと出来るのならばリュードはまた飛躍できる。


「……ありがとう、父さん」


「僕に出来るのはこれぐらいだからな。それでも準優勝だ、おめでとう」


「…………うん」


 まだまだ準優勝に納得いかない自分がいる。

 それでも負けた悔しさは村長を越えたい、強くなりたいという思いに変わりつつあって涙は引っ込んできていた。


「さて、もう自分で立てそうか?」


「……何とか」


 自覚はあまりなかったけど体力が回復するにつけものすごい体を酷使していたことを痛感する。

 治してもらっているのに全身の筋肉がガチガチになっていてなかなか完全な治療に及ばない。


 ヴェルデガーの魔法でいくらかマシになったからヴェルデガーの手を借りながらも歩いて控え場所まで戻ってこれた。

 ぎこちない歩き方だったかもしれないが歓声に応えている風を装ってどうにかごまかせたと思いたい。


 実はバレバレでそんな様子も周りは微笑ましく見ていたのだけどリュードにそこまで気づくような余裕はなかった。


「リューちゃーーん!」


「うわっ! ルフォン!」


「大丈夫!?」


 早くポーション飲んで回復しよう。

 そう思っていると真っ白な何かがリュードに飛んできてリュードの胸に飛び込んだ。


 その勢いを疲れ切ったリュードは堪えきれずに倒れ込んでしまう。

 声で分かっていたのだけれど飛んできたのはルフォンだった。

 

 ルフォンは真っ白なドレスを着ていた。

 子供部門チャンピオンの今年の衣装である。


 まさしくウェディングドレスといった服装のルフォンはリュードにまたがって首に手を回して自分のことのようにリュードの体のことを心配してくれている。

 あの一件以来どことなく気まずいような雰囲気があって嫌われたのかと思っていたけどそんなことはなかったようだ。


 嬉しくはある。

 嬉しくはあるのだけれどリュードに肉体的余裕が一切ない。


 ルフォンの抱擁にですら全身が筋肉痛で声にならない悲鳴を上げてしまう。


「ル、ルフォン……」


「なぁに?」


「頼みがある」


 やっと絞り出せた声。


「隅に、俺のカバンがあるんだけど持ってきてほしい」


「分かった!」


 もっと優しく降りてほしいものだがルフォンはリュードから飛び上がって降りる。

 衝撃に再びリュードが悶えているとルフォンはささっとカバンを取ってきてくれた。


 控え場所の出入り口すぐのところでもぞもぞするのは何だが動けないからしょうがない。

 カバンからポーションの水筒を取り出してほとんど残っていた中身を一気に飲み干して口直しのお菓子も口に放り込む。

 

 行儀が悪いが仕方ない。

 カバンを枕になりふり構わず横になる。


 不安そうにリュードを見ているルフォンに応える元気がリュードにない。

 優勝者の衣装づくり担当たちが見ているがそれも関係ない。


 本来ならポーションは小瓶に入れて一回分の量とする。

 水筒に残っていた分だと数回分の量になる。


 市場に出せばそこそこ高級で、しかも量的には数本分はあるだろう量を飲んだためか程なくして効果は出始めた。

 ついでにヴェルデガーも本格的に治療魔法をかけてくれる。


 全身が熱くなる感覚に襲われて疲労感や筋肉痛感が和らいでいく。

 ポーションを使った無理やりな回復方法なのでちょっとばかり熱っぽい感覚に襲われる。


 お腹に手を当ててゆっくりと呼吸する。

 お腹の底に溜まった魔力を全身にめぐるように動かす。


 リュードの場合は右回転。全身に魔力を広げて頭のてっぺんから足の先まで回転させるようにして隅々まで行き渡らせる。

 しびれを切らした子供部門チャンピオンのための衣装係が呼びに来るまでには平静を装えるほどにはなっていた。


「ちょーと長すぎるわね、少し詰めてちょうだい」


 子供部門の女の子の格好は毎年違っているのに男は毎年ほとんど変化がない。


 コテコテとした衣装着させられるよりマシだけどリュードが優勝すると踏んで事前に用意されているというのもなんだかこう、納得がいかない気持ちもある。

 リュードの衣装は呼ばれていった時点でほとんど出来上がっていた。

 

 去年からの成長を見越して大きめに作られた衣装はちょっとだけ長い袖を直す程度で完成した。

 リュードをニコニコと眺めるルフォンは純白のドレスが着崩れないようにずっと立っていた。

 

 時折目が合うと手を振ってくれる。

 毎年近くで美少女たちの着飾った姿を見れるのも優勝者の役得だと思う。

 

 とはいってもテユノかルフォンしか見ていないけど。


 この世界において純白のウエディングドレスは結婚の正衣装ではないらしいけどリュードからすれば真っ当な結婚衣装である。

 思わずジッと見つめると頬を赤らめるルフォンは息をのむほど美しかった。


 結婚などまだするつもりはなかったのに結婚してもいいかもと思わせる破壊力がある。

 そして衣装のお直しが終わるとリュードとルフォンは会場に入る。


 腕を組んで会場に出る様はもはや結婚式と相違ないのではないかとすら思う。

 例に漏れず優勝者の席は大人部門女性、大人部門男性、子供部門と別れる。


 今回はメーリエッヒと村長が大人部門の優勝者。

 リュードがメーリエッヒにタオルを渡し、ルフォンが村長にタオルを渡して子供部門の優勝者の席につく。


 ルフォンはリュードの隣に座ってニコニコとしている。

 一応大人部門でも準優勝ということなのでリュードにかけられる声はいつもよりも大きく、賛辞の他になんやかんやとルフォンと仲睦まじそうな様子に冷やかしや嫉妬の声もありながら力比べは終わっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。