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執着系王子様な番と私の異世界旅行記  作者: ネコ野疾歩(黒羽慈烏)
2. 神の街トゥルスを駆け抜ける
15/31

2-4.

 私が神子の塔から飛び出して、1週間経った。毎朝、リオ様にじっと見つめられて起きるという心臓に悪い目覚めをして、体力づくりがてら草原までゆっくり走って向かい、アマデオ様作の的にライトボールとダークボールを当てる練習をして、昼食を食べたら鑑定フル稼働でお勉強しながら薬草採取して、夕飯は酔いどれ鳩で美味しいヤママバト料理を食べて、宿でリオ様と一緒の布団に入る。これがここ一週間のルーティーンだ。

 そう、可笑しいところがある。何故か、私は宿でも1人になれずリオ様が引っ付いてくる事態になった。1人部屋がいいと主張してみたのだが、リオ様に主張は黙殺された。毎晩、一緒に布団に入って寝る。もちろん私は子どもなので健全な同衾なのだが、そうじゃないだろうと主張したい。

 そろそろ私、リオ様でお腹いっぱいになってきた。とはいえ、リオ様もその辺は分かってくれているのか、べたべたするが静かだし、ちゃんと着替えの時などはプライバシーを守ってくれている。本当に触られたくない時は、拒否すれば引いてくれるし、まだ一緒に居られる。それもこれもリオ様がイケメンだからである。お綺麗な顔の人が私を優先してくれるから、ちょっと気持ち良くなって、まあいっか、となるのだ。美形はお得である。


 さて、毎日同じルーティーンで過ごしていたのだが、今日は冒険者ギルドに行くことになった。何でも、誰からともなく「そろそろ冒険者ギルドに顔を出しておいた方がいいような?」と言い出して、確かにとなったのだ。そして、ついでに私を冒険者ギルドに登録させて、リオ様達のチームのポーター登録してしまおう、ということになった。

 ポーター登録、というのはその名の通り、荷物持ちの非戦闘員のことだ。だいたいが時空属性魔法のアイテムボックスを使える人で、時たまマジックバックを個人所有している人が利用する制度である。荷物持ちをする代わりに、そのチームに守ってもらえるという専属契約で、非戦闘員または戦闘技術が発展途上中の人が利用するのだ。ポーターの相場は、だいたい報酬の1割。多いのか少ないのか分からないが、守ってもらえて運ぶだけでお金が貰えるなら、破格なんじゃないだろうか。


「まあ、僕達はお金に困ってないし、4等分でいいんじゃない? 今のマリアちゃん、物入りだろうし」

「別に俺が買うでも構わないが。個人資産は重要だからな」


 リオ様に説得して歩く許可を貰い、……いや、歩く許可って何だろう。ともかく、リオ様の左隣で手を繋いでおり、私の左にはアマデオ様が立っている。ラディ様はリオ様の後ろにおり、振り返ったらにこにこと微笑んでいた。この隊列で冒険者ギルドまで歩いている最中、という訳である。泊まっている宿はトゥルスの街の中心街近くにあるので、冒険者ギルドは遠くなかった。

 冒険者ギルドと言われて最初に想像したのは、木製の大きな建物で、ウエスタンスタイルのスウィングドアである。でも辿り着いた冒険者ギルドは、大きな石造りの建物で、観音開きの木製のドアだった。今は開業時間だからか、ドアは開けっ放しになっていた。

 人を避けながらすいすいと中へ入っていくリオ様についていくと、正面に紙がたくさん貼られたボードが視界に入る。右側も色んなサイズの紙が貼られたボードと、いくつか椅子が置かれていた。左側はカウンターになっていて、色んな種族の人がカウンターに立っていて、受付なのだろう、色んな人が話していてガヤガヤとしている。


 どのカウンターへ行くのだろう、と思ったら左奥に隠れていた階段を上り始めた。大人しくついていくと、階段あがってすぐの壁に少し張り紙が貼ってあって、向かいに1階より狭いカウンターがあった。1階とは違い、個室か何かがあり、階段もあるようだ。少なくとも3階建てとは、この建物は随分と大きいらしい。


「やっほー、ラニエリはいる?」

「アマデオさん! いますよ、今呼んできますね」

「ありがと、セフィーヌ嬢」


 アマデオ様が受付に立っていた女性に声を掛けると、女性もにこにこと笑いながら後ろへ引っ込んでしまった。どうやら、アマデオ様ご指名のラニエリ様を探しに行ってくれたらしい。受付の人かな、と首を傾げているとアマデオ様がこちらを向いてにこっと笑った。


「ラニエリは前に、別の場所でちょっとお世話になってね。ここに移動になったって聞いてたし、顔は合わせてあるんだ。ラニエリなら信用できるから、任せられるよ」

「ラニエリ殿は優秀な獣人族のギルド職員です。マリア様のポーター登録にケチがついてはいけませんからね。ここはラニエリ殿に任せましょう」


 どうやら、ラニエリ様は随分と信用のあるお方らしい。どんな人だろう、とそわそわしながら待っていると、受付にやたら体格のいいゴツい男性が現れた。どんっ、と乱雑に椅子に座ると、不機嫌そうに鼻を鳴らして低く唸るような声で文句らしき文言を口にした。


「煽てたって何も出ねぇぞ、不良ギルド員どもめ。お世話になっただぁ? 確かに世話してやったな、貴様らの奇天烈なやらかしの尻拭いならな」

「ほらぁ、やっぱりラニエリにお世話になったで合ってるじゃん。あの時は大変なことになっちゃったもんねぇ、ラニエリがいてよかったよホント」

「おかげ様で知りたくもねぇ裏側にまで詳しくなって、更にコキ使われる毎日だ。ありがとよ、地獄に堕ちろ」


 機嫌悪そうに、親指を下に向けたサムズダウンをしていた。どう考えてもいい意味にはならなさそうなのだが、顔を上げてみるとリオ様もアマデオ様も笑っている。ラディ様は苦笑いしているが、それだけだ。

 よく分からないが、この3人はラニエリ様にご迷惑をおかけして、ラニエリ様はそれを恨んでいるという感じだろうか。いや、恨んでいるといっても軽口程度で済むのだろう。ラニエリ様は既に何やら紙束をトントンとして、カウンターに置いていた。


「ほら、ギルド登録書とポーター登録書だ。これ書きに来たんだろ?」

「流石ラニエリ、わかってるぅ!」

「お前ら目立つんだよ。ギルド内では、お前らが神子の塔でポーター捕まえたって既に話題になってるっつーの。そこら辺の草っぱらで訓練させてりゃ、目撃者多数だわ」

「じゃあ、それがヴィルの番だってのは、どう?」


 ラディ様が紙束を引き寄せて、懐から出した蓋付き万年筆らしき筆記用具でさらさらと紙に書き始めていた。どうやら私の代筆をしてくださっているらしい。私としても転生してからこの方筆記用具を手にしたことはないし、この世界の文字がきちんと書けるか不安なので有り難い。読めるんだけどね、書けるかどうかはまた別問題だよね。いつまでも代筆してもらう訳にはいかないし、近いうちに確かめねば。

 私がそんなことを決意している間にも、ラニエリ様とアマデオ様の会話は続いていく。そして、話題は番に移ったところで、ラニエリ様が素っ頓狂な声をあげた。


「は、はあああっ!? 番? 誰の? お前の?!」

「俺のだ。俺の番、マリアステッラだ。可愛いだろう?」

「ヴィルが喋るのも久々に聞いたし、挙句にお前の番だぁ? ……2階で良かったな。1階だったら横やり入っただろうよ」

「だから2階に来たんだよ。いやあ、2階のカウンターがある大きなギルド会館がある街はいいねぇ。しかも口止め出来る優秀なギルド職員付き。話が早くていいよね」

「だから俺をご指名だったのか。お前ら、騒動の中心に居ないと死んじまう病にでもかかってんじゃねぇのか」


 ぎゃいぎゃい大騒ぎだけど、いいのだろうか。不思議に思ってきょろりと周りを見渡すと、ラディ様が近寄ってきてそっと教えてくれた。ラニエリ様が受付に座った時点で、ラディ様が闇属性魔法の吸音をかけて、防音のような役割を果たしているらしい。だから、他のギルド職員には聞こえていないらしい。ラディ様が吸音をかけるのはいつものことなので、誰も気にしないらしい。それに闇属性を使える人はだいたい吸音を使うので、そこまで目立つことでもないらしい。

 それから、ギルド登録のために書類に書いた内容が大丈夫か確認をして、ポーター登録の書類の誓約書のような内容も確認した。特に問題はなさそうなので、ここだけは直筆の必要があると言われ、万年筆みたいなペンを借りてサインする。この世界の文字は書き慣れてなくて字は汚かったが、手は動いたし文字自体は書けることが判明した。


「ラニエリ殿、書類書き終わりました。マリア様、ステータスカードをお出しください。登録で必要です」

「分かりました。ステータスオープン」

「……ああ、受け取った。ちぃっと待ってろ。2階でも冒険者登録は出来るからな。でもお前ら、ポーター登録で報酬が全員で等分っていいのか? ポーターとしては破格どころじゃねぇぞ。普通のチームメンバー扱いじゃねぇか」

「いいのいいの、マリアちゃん筋いいもん。すぐに冒険者ランクも上がるし稼げるようになるよ」


 ラディ様に促されてステータスカードを開示して、ラニエリ様に手渡す。ラニエリ様は呆れたような声で、書類にさらっと目を通しながらそんなことを言っていたが、アマデオ様は意に介した様子はなかった。出来れば私としても、お荷物にならず役立つ人材となりたいものである。アマデオ様の言う通り本当に筋がいいならいいんだけど、と息を吐いた。

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