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第9話 デパートデート

「ん、後輩くんのもらうねー」

「あっどうぞ」

「んー、おいしー」

  

 美味しそうに食べる風音を見るこちら側が癒される。

 なんといえばいいのだろうか。小動物の可愛さというか。

 すこーし酔っ払いの部分はあるけども。


「あっ私のも食べる?」

「ではもらいます」


 そして風音はフォークを指してステーキを千秋の口元にまで持っていった。


「......先輩?」

「ふふーん」


 そして何やら不敵な笑みを浮かべた。


 これはあーんと言うやつなのだろうか。

 

 思わず顔を顰めてしまう。



「どうしたの? 食べないのかい? 後輩くん」

「貰いますけど......皿置いてくれます?」

「嫌だねー、こうしないと食べれないよ」


 そしてステーキを見ると肉汁が落ちてきそうであった。

 ここで断るという選択肢は無くなってしまった。


 千秋は羞恥心を抑えて食べる。


 そして飲み込んだ。


「よくできましたー」

「子供みたいに言わないでください」

「現に年下だしね」

「いやまあそうですけど」


 確かに風音の方が年齢は上である。


 反論できないなと思いつつ、前を見ると風音は顔を真っ赤にして固まっていた。



「......先輩?」

「いやぁ......えっと、なんでもない」


 (これ間接キス、やばい、やっちゃった)


 そう、風音は自分の使ったスプーンを使ってステーキをあげたのだ。


 風音の方がダメージはデカかったようだ。


 ***


「ぐぬぬ......取れないー」


 千秋たちは昼食を食べ終えた後ゲームセンターに来ていた。

 そしてクマのぬいぐるみを取るのに苦戦をしている人が1人。風音である。


「先輩、下手ですねー」


 千秋はわざと煽り口調で言う。


「む、じゃあ取って見てよ」


 少し拗ねたように風音は言った。やはり小動物のような可愛さがあるなと再認識した千秋であった。

 

 風音は100円を入れて千秋に変わった。


 千秋はレバーを持ち、迷うことなくクマのぬいぐるみのちょうど上にキャッチャーを持って行く。

 そしてボタンを押す。


 綺麗にアームの先端がぬいぐるみに引っかかり取り出し口にぬいぐるみが落ちた。


「こういうことですよ、先輩」

「すっすごい......」


 超絶無駄な技術である。というか取れたのはまぐれである。

 実際100回やって9、10回商品を掴めるかどうかの千秋だが、本当にたまたま一発で取れた。

 少しドヤっているが内心安堵している。


 風音はぬいぐるみを取り出して抱き抱えた。


「ねえ、これもらっていい?」

「どうぞ、俺いらないので」

「ありがと」


 そして風音はいつも通りの笑顔で笑った。

 しかしそれに何故か千秋は心が反応してしまった。


 千秋は風音から視線を逸らす。


「うん? どうしたのかな後輩くん、もしかして美少女がぬいぐるみを抱き抱えている姿にときめいちゃった?」

「そんなことないです!」

「うっそだー」


 そうして5時ごろまでショッピングセンターで遊んだ。カフェに行ったり、買い物をしたり。


 間違いなく高校時代にはなかったことだ。


 ***


「今日はありがとうね、千秋」

「こちらこそ楽しかったですよ」

「それはよかった」

 

 そして千秋たちは帰路についた。


「にしても先輩、ゲームが下手ですね」

「あれはわざとですー」

「お金減ってるだけじゃないですか」

「ぐふ......」


 懐かしさを覚えると同時にまた先輩とどこかに行きたいという願望まで芽生えていた。


 (やっぱり俺はまだ風音先輩のことが......)


 しかし千秋はなかなか自分の気持ちに素直になれない。


 (まあ、このままでいいか)


「先輩、荷物持ちますよ」

「あっありがと、助かるー」



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