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第8話 呼び捨て

『ピンポーン』


 千秋はインターホンを押した。

 するとすぐに風音が出てきた。


「おっはよー、後輩くん、じゃあ行こっか」

「そうですね、行きましょうか」


 風音もラフな格好であった。変に張り切りすぎないで良かったと千秋は安堵した。

 それでも風音は可愛いことを改めて認識させられる。


「先輩それメイクしてるんですか?」

「ん? メイク? 私不器用だから1人だとできないんだよねー、だから今日はしてきてないかな、髪とかはそりゃ整えたけど」


 (......なぜだろう、色々と今日は意識してしまう、風音先輩はただの友達、うん)


 千秋は速くなった鳴り止まぬ鼓動を落ち着かせながら歩き出した。


「ごめんね、千秋、急にショッピングセンター行きたいなんて言い出して」

「いえ、全然、むしろ嬉しいです」

「そっか、そう思って貰えて良かった」


 風音はニコッと笑った。その姿に思わず千秋はドキッとしてしまい顔を逸らした。


 そしてしばらく経って風音が千秋にこんなことを言った。


「......ねえ、千秋」

「はい、どうしました?」

「もうさ、私たち高校生じゃないんだし、その......敬語やめてもいいんじゃない? 私のこと風音って呼び捨てでもいいし」


 風音の顔は少し赤くなっている。しかしそれに気づくより千秋はドキドキとしていた。

 (風音先輩のことを呼び捨て? それこそもう......)


「えっと、先輩はそれでいいんですか?」

「うん、別に気にならないし......それに呼び捨てで呼んでほしいし」


 こう言われてしまっては断れないものがある。


「......風音」


 千秋が緊張しながらも呼び捨てで言うと風音は何やら慌て出した。


「えっと、風音?」

「あっ、うん、あの、やっぱりいつもの感じでいいよ! うん!」


 ***


「最初にちょっと服見にいってもいい?」

「俺は行きたいところないのでどこまでもお供します」

 

 ということで千秋たちは洋服屋に来ていた。



「うわあ、可愛い!」


 と風音は白のワンピース片手に姿見を見ている。

 


「試着してみよっかな、千秋見てくれる?」

「えっあっはい」


 急に指名され思わず、はい、と答えてしまった。


 (......いや、うん、友達の試着を見ることってよくあるよね)

 

 そう自分に言い聞かせた。


 (ていうか最近の俺どうしたんだ......一体)



「それじゃあここで待っててね、あっ覗いたりしないでよー」


 そして千秋は試着室の前の椅子に座った。


 風音はカーテンを閉める。

 するとすぐに服を脱ぐ音が聞こえた。


 (......ダメだ、想像してしまう......ひっ羊のことでも考えよう、うん、羊が1匹、羊が2匹)


 しかしすぐに現実に戻される。

 (最近本当どうしたんだ?)


 

 そんなことを考えていると、風音は着替えたのかカーテンを開けた。

 思わずびっくりして軽く飛び跳ねてしまう。


 そして、千秋にしばらくの間、心に安らぎは来ないようだ。


「どうかな、後輩くん」


 白ワンピースを着た風音の姿を見て、可愛い、と本気で思ってしまったのである。


「かっかわい......似合っていると思います!」

「ありがと、じゃあこれ買っちゃおうかな」


 そうしてそれを何回か繰り返すことになった。千秋のSAN値は削られていくこととなった。


 ***


「ファミレスもメニューちょっと増えましたね」

「だねー、ファミレスはなかなか来なかったから、久しぶりだよ」


 服を見ていれば時刻はもう12時をすぎていた。


 ということで安くて美味しいファミレスである。


 千秋はチーズハンバーグを、風音はサイコロステーキを頼んだ。


 

「そういえばビールは頼まなかったんですね」


 千秋は少しイタズラっぽく風音に言った。

 すると風音は視線を逸らしてバツが悪そうにした。


「(酒癖悪いって思われちゃったのかな......うう)」

「何ごにょごにょ言ってるんですか」

「......私だっていつも飲んでるわけじゃないし、あれはたまたまだもん」


 拗ねているところも一瞬可愛いと思ってしまった千秋は自分の頬を想像の中で殴った。


「お待たせしました、こちらチーズハンバーグとサイコロステーキになります」


 しばらくすると、料理が運ばれてくる。

 良い匂いが鼻腔を掠め、食欲をそそられる。


「うわあ、美味しそう!」

「ですね、それでは、いただきます」

「いただきます」


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