第7話 ファッションセンス
短めです。
とうとう当日が来てしまった。
自然に朝6時に起きてしまうという千秋にしたら謎の快挙も成し遂げていた。
早く準備しておいて損はないのでパパッと顔洗いやら歯磨きやらご飯やらその他諸々を済ませる。
そして最初の難関と言える服装選びである。
あまりファッションというものとは無縁だった千秋にとってこれほどまでに難しいことはない。
今まで大学生活で大体ズボンはバイトのために黒にしてきたし上は適当に選ぶだけであった。
友人に聞くという選択肢もあるが揶揄ってくる可能性もあるのでやめておくことにした。
しばらく服と睨めっこする。
何枚か来てみて姿見で自分の姿を確認するが自信がなかった。
悪くはないしむしろ良いと思うのだがこの服を客観的に見るとどうなるのかが想像つかないため悩ましいところである。
そして気づけば1時間が経過していた。早起きできてよかったと心から思う。まだ時間がかかりそうだ。
とりあえず埒が開かないため、仕方なく友人に相談することにした。
(嫌だけど、ここで渋ってもなあ、でもあいつからかってきそうだし......)
悩んだ末に千秋は赤木 恭助に相談することにした。
恭助と千秋は高校時代からの友人で学部は違うが大学も同じである。
千秋は恭助に、おはようとメールを送る。
『おはよう』
『おはっ』
するとすぐに既読がついて返信が来た。
『恭助に相談があるんだが......』
『んん? どうした?』
『今から出掛けるんだが服何がいいと思う』
『ははーん、女の匂いがするぜ』
赤木は大学デビューというやつに成功して無事モテている。
ファッションが秘訣、というのが口癖でファッションセンスがいい。
少々女ごとになると絡んでくるのだがその代わり非常に頼れるのである。
『まあな』
『ふーん、ちなみにその子とどんな関係なの?』
『友達?』
『ああ、なんだ彼女かと思った、じゃあラフな格好でいいんじゃないか? 変に張り切ってもダメだろ』
『......たしかに、ありがとう』
『おう、またデート終わったら進捗報告してくれよ』
『気が向いたらな』
(ラフな服装......か)
確かにそんな格好でいいのかもしれない。変に意識していたが冷静に考えて風音は初恋の人とはいえ友達である。
そう思うとなんだがすっと心が軽くなってすぐに決めることができた。
「よしこれでいいか」
千秋は自分の姿を鏡で確認する。
別に似合っていないというわけではないし申し分ない服装ではあると思う。
上はオーバーサイズニットで全体的に落ち着いた色である。
赤木に言われてからはすんなりと決められた。時間にも余裕がある。
床に散らばった服をタンスに閉まって時間まで部屋の片付けでもしておくことにした。