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第6話 先輩の手作り料理

 机には炒飯と味噌汁が置かれていた。

 見た目と匂いからすでに美味しいと分かる。


 千秋と風音は向かい合う形で椅子に座った。


「ごめんね、他の食材あんまりなかったからこれくらいしか作れなかったけど」

「ああ、いえ全然、むしろありがとうございます」

「それじゃあいただきます」

「いただきます」


 まず炒飯からいただくことにした。


 スプーンで口まで運ぶ。


「......美味しいです」

「ほんと? よかった」


 ご飯はパラパラで味付けも程よく油が重くなくちょうどいい。

 卵のふんわりとした食感が合わさって癖になる味わいである。


 なんとも心が満たされる味わいである。


 味噌汁も、もちろんのことだが美味しい。


「千秋ってあんまり自炊してないでしょ」

「いっいやあ、そんなことないっすよ......」

「食材があまりにも少ないもん」

「......まかない食べてるかコンビニ弁当です」


 痛いところを疲れ思わず目を逸らしてしまう。

 と言っても自炊はできそうにないので諦めるしかない。


 (先輩の手料理が毎日食べられたらな......)

 一瞬思ったが無理な話だろう。そう思っていると風音が思わぬ提案をした。


「まったまにならお裾分けあげるよ」

「えっ本当ですか?」

「うん、料理するのは好きだしね」


 願ってもないことである。

 こうして千秋は楽しみが1つ増えたのだった。


 

 ご飯を食べ終えた千秋と風音はあとはひたすらゲームをして過ごした。

 気づけば時刻は18時を回っていた。


「あっじゃあそろそろ帰るね」

「はい、えっと今日は色々とありがとうございました」


 色々と言ってもご飯を作ってもらっただけであるが。

 風音は照れ臭いのか少し頬を赤くした。


「......まあ、お世話になったのはこっちなんだけどね」


 千秋は風音を玄関まで行って見送った。


「ねえ、千秋......また遊びに来てもいい?」


 そう言って風音は髪を耳にかけた。一瞬その仕草に千秋はドキリとしてしまう。


「はっはい、もちろんですよ、こっちからも遊びに行っていいですか?」

「(一応女子の部屋なんだけど......まあ千秋ならいいか)」

「風音先輩?」

「ああ、うん、全然いいよ......じゃあばいばい」


 ***

 

 千秋の恋した女性は風音ただ1人だけであった。

 女子との接点もなくあそこまで関わったのは風音だけ。


 つまり女の子慣れというものをしていないわけである。


 風音は気を許せるので家にあげて一緒にゲームをするくらいはできるのだが、それ以上となるとおそらく不慣れなぎこちない感じになってしまうだろう。


 合コンにも誘われはするがバイトがあると言って断ってきている。

 千秋にとって合コンは想像しただけで精神が削られる場所である。


 今までの人生で女性とあまり接してきていないのである。


 だから風音に「お互い暇な日一緒にショッピングモール行かない?」とメールで誘われた時はかなり心臓の鼓動が速くなった。


 きっと男友達からの連絡だと思い、再度メールを送ってきた相手を確認するがやはり送り主は風音である。

 文面を見て千秋は心臓の鼓動を抑えることができない。


 (ええええ!? これはデートのお誘いというやつでは?)


 向こうも友達感覚で誘ってるのだろう、と思ってもやはり心臓が音をたてている。


 ただ、断らないという手はないのでカレンダーを確認した。


 (誕生日の3日前がちょうど空いてるのか)


 千秋はメッセージを打ち込み、送信する一歩前で止まった。


 (やっぱりこれデートってやつだよね? うん)



 女性経験がなさすぎたことに気づいたため千秋は送信をやめようかと思ったがもう遅かった。

 指が送信ボタンに当たっていたようだ。


「......ああ、やばい、どうしよう」


 昔のこととはいえ好きだった先輩とのデートである。

 それに千秋は風音のことを可愛いとは思っているため嫌でも意識してしまうものなのである。


「ていうか、先輩なら余裕で彼氏作れそうなのになんで作らないんだろ」


 大学でもさぞモテていることだろう。そうは思ったが風音に彼氏はいないという。

 まあ年頃の女の子ではある。好きな子ぐらいはいるだろう。


 (俺なんかと遊んでないで、好きな人か彼氏と行けばいいのに)


 自虐的に心の中で呟いた。


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