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恋は猛毒  作者: れん
1/1

渡瀬松わたせまつ‥‥あることをきっかけにクラスのヤンキーを殺してしまう主人公。

柿田藍かきたあい‥‥松のストーカーで、松のことを匿う主人公。


僕はパシリだ。


僕は渡瀬松わたせまつ

クラスのヤンキーのような存在、町野くんの奴隷。

「おい、お前飲み物買ってこい。俺は炭酸な。」

「俺オレンジジュース!」

「水。」

「お茶。」

「炭酸。」

全部僕のお金で買うのに。

「あとパンもよろしくな。焼きそばパン。人数分。」

「はい。わかった…。」

僕はこけながらも走ってパンを先に買いに行った。

五人分のパンを抱えるのは大変で、僕は家にあった風呂敷を持ってきた。そして風呂敷に包んで飲み物を買いに行った。

自動販売機で五人分の飲み物を買い、床に置き、風呂敷で包んだ。立ち上がろうとした時、上から水が降ってきた。

上を見ると窓からバケツも降ってきた。頭にバケツが当たって痛かった。

でも僕は風呂敷を抱えて走った。

「…買ってきたよ。」

「チッ……んだよこれ。ビショビショじゃねぇか。買い直せ。」

水をかけたのはお前らだろって言いたかったけど、言えなかった。

僕は俯き、髪から水を垂らしながら小さく頷いた。

こんなのもう嫌だ。僕は走りながら泣いた。

髪から垂れる水と涙が混ざった。


家に帰っても僕一人。父さんは引きこもり。母さんは、父さんのせいで過重労働をしすぎて死んだ。

僕は家に帰って料理を作ろうと包丁を持ってキッチンに立った。

ああ。いつまでこんな生活を続けるんだろう。

そんな時、キッチンから見えるリビングのテレビで「生徒が生徒を刺して自殺した」というニュースが流れているのが見えた。

僕は手に持っている包丁を眺め、決めた。

あいつを、

あいつを、

あいつを殺すと。


翌日。

僕はいつものようにパシリをしていた。

「昨日言ったやつ買ってこい」

「わかった。」

僕は自動販売機に向かって走った。きっと、走っている時の僕は笑っていたと思う。今日、あいつが死ぬ。


僕は自動販売機の前に立ち、ポケットの中のナイフを握りしめた。そして笑った。

やっと。やっと死ぬんだ。

その時、パシャっとシャッター音が聞こえた。

振り向いてみたが誰もいなく、幻聴かと思い知らんぷりをした。

教室について、あいつに一歩、一歩と近づく。

あいつは僕に背を向けて楽しそうに喋っている。

僕は今だと思い、走ってあいつに抱きつくように刺した。

ナイフをあいつから抜き、そっと後退りをする。

そして、あいつが倒れるのを待つ。

数秒後、あいつは苦しそうにバタッと倒れ、血を流していた。

クラスのみんなが静かに驚いていた。

そして、みんな僕のことを見た。僕の手元の血だらけのナイフを見つめた。

僕は捕まらないように走って、学校から抜け出した。

パトカーの音が聞こえる。救急車の音も。

走って逃げて、隠れられるような暗い建物と建物の狭い間に隠れた。疲れ切ったのか、建物に背をつけ、崩れ落ちるように座った。そして、笑った。

あいつが死んだ。

SNSには『クラスのやつが陰キャに刺されて死んだ』とか『やばい、人殺されたんだけど』とかが書かれていた。みんな、あいつが刺されたことしか書いてない。でも一つだけ、全然違うことを書いてるやつがいた。

『俺は、嬉しい。』と。

その時、「ねぇ。」と誰かに話しかけられた。

僕は見上げた。でも逆光で、よく顔が見えなかった。ただ、僕の学校の制服だということはわかった。

僕は立ち上がって「ぼ、僕を捕まえようと思っても無駄だよ」と言い、逃げようとしたが後ろからハグをされ、「俺は君の味方だよ。」と言われたので、僕はそいつから離れて顔を見た。見たことない顔。でも、綺麗な顔立ちをしている。

「こっち、来て。」そいつは僕に顔が隠れるくらいの黒くて深い帽子を被せた。

そして僕の腕を引っ張って走った。

しばらく走ると、大きい家についた。

「ここ、俺の家。」

そいつは鍵を開け、「入って」と、ドアを開けた。

「お邪魔します。」と玄関まで入ると、「いいよ、入って。」と手招きされたので、リビングまで行った。

すると

「え…。」壁一面に僕の写真が貼られていた。

「あ、これ?ごめんごめん。」そいつは僕のことを押し倒し、「俺は柿田藍かきたあい。松くんのストーカー。」と笑った。

あ、あの時のシャッター音はこいつの…。

そう思うとなんだか怖くなって、僕は立ち上がって、逃げようとした。

すると腕を掴まれ、引っ張られた。

その拍子にキスをしてしまった。

「…!ぼ、僕はもう行く。」

手を振り払ってドアを開けようとした時に、

「あーぁ。せっかく匿おうと思ったのに。君が逃げたら、君の居場所、警察に教えちゃうよ?」とそいつはスマホを僕に見せて、ニヤついた。

スマホの画面には、僕の位置情報のようなものが表示されていた。

「松くん居場所は、僕が知ってるんだから。」

…捕まるくらいなら。自分の身を犠牲にしてしまおう。

「…匿って…ください。」

「よくできました。」柿田藍は微笑み、僕に抱きついてきた。

「これからよろしくね。松くん。あ、あと匿う上で条件が一つあるんだ。俺と付き合うっていう。」

「は?」

「あれ?反抗しちゃう?」

「…わかった。」

「いい子いい子。」

柿田藍は僕の頭を撫でた。


こうして始まった、僕と僕のストーカーの逃亡生活。

でも、僕は知らなかった。

僕が、猛毒に染まってしまうことを。柿田藍に堕ちてしまうことを。


恋は、猛毒だということを。



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