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第8話 学年会

放課後。


セスティールとルイスは、グレイディ教官から職員室前へと呼び出されていた。

職員室はさすが学園の教師の仕事場というべきか、なかなかに豪華な作りで、厳かな雰囲気を加味し出している。

豪華すぎて、逆にやりすぎと思えなくもないが。


ぼんやりと扉の緻密な装飾を眺めていると、隣でルイスが口を開いた。


「何の用だろうね。武術の授業の説教の続きかな?」

「そんな訳ないだろう。あの話はあそこで終わったんだ。それに、もし説教の続きならここにオスカーがいないのはおかしいじゃないか」

「はははっ。そんなに本気になって反論しなくたっていいじゃないか。さては、ちょっと気にしているな?」

「…」


クスクスと笑みをこぼすルイスに、セスティールは鬱陶しげな視線を返す。

剣呑な表情とは裏腹に、その瞳には楽しげな光が宿っていた。


鋭めな軽口を叩き合うこと数分。馴れ合う2人の前に、1人の生徒が現れた。

その姿を認めたセスティールは、思わず顔を引き攣らせた。


「…オスカー?」

「ああ、セスティール殿。貴殿も呼ばれたのか。…どうした?顔が引き攣っているが」

「…いや、なんでもない」


なんという偶然だろうか。別に強がりでもなんでもなく別件で呼ばれたとわかっているのだが、ここまでタイミングがいいと微妙な気分になるというものだ。


側ではルイスが堪えきれずに噴き出している。イラッとしたので、セスティールは軽く肘鉄を打ち込んだ。


「ところで、オスカーも教官から要件は聞いていないのか?」

「ああ。俺も知らないぞ。何の用だろうな?」

「そうか…」


三人揃って首を傾げていると、背後から再び誰かが近づいてきた。


「おやおや、教官に呼ばれてきてみたのだが場所が間違っていたようだ。まさかこの私が、卑しい魔族などと同列に扱われるはずがないのだからな」


教官がきたのかと思ったところにこの発言である。一気に振り向く気が失せた。


「いや、違うな。場所を間違っているのは貴様らではないか?そうだ、きっとそうに違いない。であれば、今すぐここを去ることをお勧めするぞ。なぜならーー」


取り巻きにかこまれながらルーメンルナーエは堂々とそんなことを宣う。


入学式の日に因縁をつけられてから1週間ほど経ったが、ルーメンルナーエはしばしばセスティールに絡んできていた。

最初の頃は全く気にしていなかったが、ここまで何度も繰り返されると鬱陶しくもなってくる。


一方的な暴言に両隣に立っているルイスとオスカーも不快そうな表情をしている。


さて、今度はなんと返事をしてやろうかとその侮蔑に歪んだ表情を見つめながら思案した。


「そこの三人は確かに私が呼んだ。間違いではない。むしろ、貴様の周りを囲んでいる者どもの方こそ私は呼んだ覚えはないが、ノア」


セスティールが買い言葉を放とうとした時、背後の職員室の扉から教官が現れた。

あのままセスティールが発現していたら、大小に関わらず揉め事に喧嘩に発展していただろう。

なんとも絶妙なタイミングである。ただ、一方的に暴言を吐かれて一言も言い返せなかったことには若干の不満を覚えはしたが。


「何をしている。教官もこうおっしゃっているだろう。呼ばれていないものは疾く去れ」


オスカーが取り巻き達に向かってそう言い放つと、彼らはルーメンルナーエともう1人の茶髪の少年を残して去っていった。


残された2人は、セスティールたちを忌々しそうに睨みつけ、またその視線を受けたセスティールたちも表情に浮かぶ嫌悪感を隠そうとしない。


目の前の生徒達の明らかに険悪な空気に密かにため息を着きながら、グレイディ教官は彼らを先導するために歩き出した。


「場所を移動する。ついてこい」



連れ立って、職員室の横の廊下を進む。教官を待っていた時は、その空気感から教職員しか入れないところだと思っていた場所である。


職員室や講堂とまではいかずとも、繊細で美麗な装飾を施された扉が立ち並ぶ廊下を進み、その最奥にある扉の前で教官は立ち止まった。


「ここだ。入れ」


鍵を開けて中に入った教官に続き、その部屋の中へと入る。

その内装を見て、セスティールたちは揃って息を呑んだ。


プラフラマ家当主の執務室の3倍はある部屋の中は、まるで王城の政務室のようであった。

扉の直線上の机にこちらを向いて設置してある一際大きな執務机があり、その左右に向かい合うように一回り小さい机が3つづつ並んでいる。


「ここは…?」

「学年会室だ」


まだ驚きは冷めやらなかったが、その言葉を聞いて一同は豪華な室内の内装に納得した。


学年会。

それは、学園における生徒の自治組織の一部である。

学園には、風紀会や保健会などさまざまな生徒主体の組織を学園全体で統括する生徒会が存在する。そのメンバーはそれぞれの学年の首席計4人、プラス最高学年の次席の合わせて5人の生徒で構成される。

学年会は、その生徒会のメンバーが会長となってそれぞれの学年を纏める役目を負うのだ。


「諸々、説明しなけらばならないことが多くある。とりあえず皆、隣の休憩室に移動しようか」


教官が、横の壁に設置されている扉を指差して言った。



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