夢の中
目を覚ますと、布団の中にいた。
どうにも、朝7時頃のようであり、何故それが分かったかといえば、リビングルームから(?!)、朝のニュース番組内で、メガネの中年アナウンサーと、若い美人アナウンサーが掛け合っている声が聞こえてきたからである。
「学校いきたくないなぁ」
布団の中でうずくまりながら、このようなことを考えており、というか、学校とは何なのだ。自分は労働者の筈だろうが。なぜ今から学校を控えている。
「タカちゃん、今日も学校にはいけないの?」
おそらく母と思しき声が、ドアの外から聞こえてきた。
「うん。ちょっと、無理だね」
「わかったわよ。お部屋の外に朝ご飯おいておくから、後で食べてね」
「うん。。。」
薄々気づき始めたが、これは夢である。それに、自分の幼少時代の夢ではない。
小学校5年生もしくは6年生である引きこもり息子を主人公とした夢であり、どうやら彼に憑依したようであった。和久田自身は、小学生時代、引きこもりではなく、学校に通うだけは通っていた。もっとも、小学校にはガールフレンドどころか、友人と呼べるような存在もおらず、まるで、映画館へ映画を観に行き、満足してすぐに帰るかのように学校へ通っていたものだから、その本質は引きこもりと変わらず、移動型引きこもりとでも呼ぶのが適切であろうが、とにかく、コミュニケーションの少ない機能不全家族内に生きていたので、悩み事を打ち明けるようということも出来ないため、引きこもりになれるほどの関係すら両親と築くことができていなかったのである。
しかしこの主人公の学校の生きたくなさは尋常ではないというのが伝わってくる。
夢は何の脈絡もなく、場面転換する。
次は、どうやらこの引きこもり青年、大学には入学でき、真面目に通っていたようだ。そうして、大学4年生時には、大手町にビルを構えるような大企業へ無事に就職し、初出社を試みていたようだった。彼の時代の就職活動とは、大卒者であれば、志望させすれば入りたい企業に入れる時代だったらしい。
ところがどっこい、いつまで立っても、目的地であるビル前に到着したものの、入口に入ろうとしないで、目の前に来てはまた帰ろうとしたり、かとおもうと、勇気を振り絞って自動ドアへ向かおうとするも、また、立ちすくみ、Uターンしてしまった。
「おい!そこの君!一体!なにをやっているだね!!」
警備員からの怒声が、和久田が憑依している彼を穿った。
「ひぃっ!!!すいばぜん。。。」
彼は、そのまま初出社当日、職場にたどり着くことはできず、少し駅を移動し、某女子校前の喫茶店内で、珈琲を飲み、サンドイッチをほうばりながら、窓越しに、そのグラウンド内がちょうど見えるようになっており、女子高生が、なにか、走り幅跳びのような競技に勤しんでいるのを眺めながら、この時代の体操着は肌の露出が激しいため、おもむろに、右手をズボンの中に投入し、その、一物を刺激しはじめた。
突然、後ろから、たくましい声が聞こえた。
「お兄さん!ちょっといま、なにをやっているのですか。署へ同行願います!!」
警官の声だった。
・・・ここで夢は終わり、ボクは目覚めた。どうやらここは病床内のようだった。
藤子不二雄Aブラックユーモア短編集のオマージュですね。。