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七宝怪談  作者: 七宝


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3/6

ケンちゃん

 ケンちゃんはいつも準備がいい。ぼくの大事な親友だ。


 小学校のキャンプの時にうちわを忘れちゃった時も「二つ持ってきたんだ」と言って貸してくれた。おかげで先生に怒られなくて済んだ。


 ケンちゃんはテストでいつも満点をとる。


 ケンちゃんは努力家だ。死ぬ気で勉強していつも一位を取る。他の生徒にも先生にもカンニングを疑われていた。ケンちゃんがそんなことするはずないのにね。


 ケンちゃんはいつも優しい。


 前にぼくが何かに躓いて転んだ時、すぐに絆創膏をくれた。それでも痛かったので救急車を呼んでほしいと言ったら、「こんなこともあろうかと、お母さんを呼んでおいたんだ」と言って安心させてくれた。ケンちゃんのお母さんはすぐに車で来てくれた。


 誰かに筆箱を隠されたことがあった。


 でもケンちゃんが見つけてくれた。


 誰かに財布を盗まれたことがあった。


 でもケンちゃんが見つけてくれた。


 誰かに後ろから蹴られて階段から落ちたことがあった。


 ケンちゃんが倒れているぼくを見つけてくれて、保健室に連れていってくれた。

 

 ぼくはケンちゃんが怖くなった。


 


 中学を卒業して以来ケンちゃんとは疎遠になった。というより、ぼくが一方的に避けている。唯一の連絡手段のLINEもブロックしていた。


 ケンちゃん、今どうしてるんだろう。


 ちょうどそんなことを考えていた時に彼の訃報が届いた。まだ二十五歳だ。まさかこの歳で同級生を亡くすなんて⋯⋯。


 なんであんなことでケンちゃんを避けたりなんかしたんだぼくは⋯⋯! なんでもっと会っておかなかったんだ! せめて仲直りだけでもしておくべきだった。


 ケンちゃんの葬儀にはケンちゃんの家族や数人の友人しか来ていなかった。ケンちゃん、ごめんね⋯⋯。


 そういえば、LINEブロックしたままだったな⋯⋯。まだケンちゃんのアカウントあるかな。


 ブロックを解除して見てみた。


「ユウちゃん!オレ医者になったよ!」


 ケンちゃんは医者になっていた。優しかったケンちゃんにはピッタリの仕事だ。


「毎日が辛い。どれだけ頑張っても、どれだけ無理しても終わらない」


 ケンちゃん⋯⋯気づいてやれなくてごめんよ⋯⋯。ケンちゃんは頑張り屋だからいつも無理して。いつもぼくを自分を犠牲にしてまで助けてくれてたのに、なに怖がってたんだぼくは⋯⋯!


「この前は愚痴っちゃってごめん。元気だから心配しないで」


 ごめんね⋯⋯


「ユウちゃん、オレ余命三ヶ月なんだって。近いうちに会えないかな」


 もう言葉も見つからない⋯⋯


「いままでありがとう、ユウちゃん。人生で一番のいい親友だった」


 こちらこそだよ、ケンちゃん。


「間違えた、いいオモチャだったよ。ストレスのはけ口になってくれてありがとう」

 

ベタベタのベタ

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