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七宝怪談  作者: 七宝
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お盆の夜

 私は会社にお盆休みを貰ったのだが、同棲している彼女の早紀が花火を見がてら友達の家に泊まってくるというのだ。私は暇になってしまったわけだ。


 しかし、そんな心配も必要なかったようだ。お誘いの電話が掛かってきた。


「お盆暇ならうちに泊まりに来いや! うまいもん食わしたるで!」


 早紀の兄からだった。早紀とは結婚も考えている。なのでお義兄さんとの付き合いも大事だ。


 というわけで一人で義理の兄になる人の家に泊まりに行くことになったわけだが、そんなヤツいるか? これは世界的に見ても珍しい例なんじゃないかな。


 この話は、その日の夜の話である。


 お義兄さんは両親の家を継いだらしく、とても広い古い屋敷に住んでいる。長男だからということで仏壇もある。


 夜は寿司の出前をとって、ビールもいっぱい飲んだ。いつの間にか夜の十一時になった。お義兄さんの家族は二階のクーラーが効いた部屋で寝るらしい。


 そして私はというと、一階の仏壇の前で扇風機のみ。暑いし怖い。泣きたいよ⋯⋯。


 まあ文句を言っても始まらないので寝ることにした。





 ⋯⋯怖いよ! 何で俺だけ仏壇の前なんだ! 寝れるか!


 しばらくゲームで時間を潰した。


 いっぱい飲んでしまったので、トイレに行きたくなってきた。でもこわい。今私がいる仏間からトイレに行くには、廊下を一つと部屋を二つ通らなければならない。


 廊下は大丈夫だが問題なのはそこから、まずはキッチンだ。ここは電気のスイッチの場所が分かりにくく、真っ暗の中手探りで電気をつけなければならない。だがこれだけならば私は何も戸惑うことなくトイレに行くだろう。この次の部屋はキッチンとは比べ物にならない。


 キッチンとトイレの間にあるその部屋は、部屋というより倉庫で、誰でも侵入出来るのだ。もちろん倉庫からキッチンに入るには鍵を開けないといけない。つまりキッチンまでは安全ということだが、倉庫には人がいる可能性がある。しかも、あろうことか、電気が無い!


 などと考え事をしていたら、猫の鳴き声のような声が聞こえた。家の中からだ。一人で来るのは初めてだが、早紀と来たことはある。この家に猫はいないはずだ。


 でもなぜ猫の声がする? 幻聴か? そっと仏間の戸を開けて廊下を覗き込んだ。


 キッチンの電気がついている! なぜだ! 兄たちは寝たはず!


 恐る恐る行ってみた。すると、そこにはお義兄さんがいた。


「お義兄さん! 寝たんじゃなかったんですか!」


「驚かせちゃったか? ごめんな、YouTube見てたんや。今流行りの猫ときゅうりの動画」


 なるほど。怖がって損した。


「明日焼肉連れてくから、許して! な?」


「やった! ところでお義兄さん、トイレ行きたくないですか?」


 怖いのでついてきてもらおう。


「怖いんか?」


「いや、そんなわけでは」


 怖いなんて言えるか!


「いいよ、ついていってあげるよ」


 お義兄さん! あなた大好きだ!


 少し涙が出そうになる。が、ここはグッとこらえて。


 暗い倉庫の中を進み、ようやくトイレに着いた。私が小便済ませるとお義兄さんが

「俺うんこするわ」


 と言ったので待つことにした。


 ⋯⋯長いな。


 私は暇だった。トイレの電気を消してみた。しかし反応がない。


「お兄さん! 大丈夫ですか!」


「大丈夫や。電気消したやろ」


 この人は暗くなっても怖くないのか。


「昔よく早紀にやられてて慣れたわ」


 そういうことか。私はひとりっ子だから分かんないや。


「おやすみ」


「おやすみなさいませ、お義兄さま」


 私は仏壇の前に戻った。やっぱり扇風機だけだと暑いな。まあ、寝れば気にならないか。




 ⋯⋯怖くて寝れん! なんで仏壇の前やねん!


 さっきのゲームで時間を潰すことにした。そして途中であることに気づいた。


 俺、焼肉嫌いやん!


 私は二階に行って兄を起こした。


「うなぎでもいい?」


「あ〜、はいはい」


 急遽うなぎに変更! やったぜ! 明日の昼はうなぎだ! 特上頼んでやる!


 私は兄の横で寝た。





 次の日の昼は、ひつまぶしを食べました。


 夜は、そうめんを食べました。


 夜中は、トイレに行きたくなりました。


 お義兄さんについてきてほしいと頼んだが、昨日電気を消したことを根に持っていたようで、断られた。


 どうしようううううう。


 一人で行くのは絶対無理だ! だって真っ暗じゃないか! それに、トイレに辿り着けたとしても手を洗うついでに鏡を見てしまう! 鏡こわいよぉぉぉお!


 帰り道だって、絶対背後に何か感じて振り向くと何かいるってパターンだ。


 もう無理だ。家のトイレは。諦めよう。


 そうだ、コンビニに行こう!


 私は車を出してコンビニに行った。男女兼用の洋式トイレに入る。便器には、異様に長い大便と大量のトイレットペーパーが詰まっていた。そして床がびしょ濡れだ。


 ⋯⋯これはトラウマになるな。まあオシッコするだけだからこれでもいいか。


 トイレだけ借りてそのまま何も買わずに出るのも悪いのでからあげ棒とプリンでも買おう。


 プリンを片手にレジに向かう。からあげ棒はレジで注文するのだ。


 レジには丸い眼鏡をかけた白い顔の青年が立っていた。


「からあげ棒くだちゃい」


「かしこまりました。少々お待ちくださいね」


 高校生くらいだろうか。偉いなぁ。こんな深夜二時に。いや、時間的に大学生か?


 車に戻り、家に帰ろうとしたところで、また怖くなった。車鏡いっぱいあるし。やだもう。

 

 妄想はさらに加速し、おばけに足を掴まれるような気がして運転席に正座状態。


 それに、来る時は気にしていなかったが、ミラー見れねぇ! 怖い!


 私は唐揚げとプリンを正座で食べた。


 さて、どうしたものか、足を下ろすと掴まれるし、ミラーを見ると赤ん坊の顔がどアップで映りそうだし、どうすればいいんだ!


 怖いよ〜怖いよ〜! もう嫌だこんな人生。


 今までこんなことなかったのに。全てお義兄さんのせいだ。トイレについてきてくれないから! ゲームでもして時間を潰すしかない!


 そうこうしてるうちに、三時になった。そろそろ帰らないと。ゲームをして気が紛れたのか、私は元気になっていた。


「よし、帰るか! 後ろに人はいないよな」


 バックミラーを見ると、自分の目が見えた。


 やっぱり怖いよぉ。


 振り出しに戻る。


 電話でお義兄さんを呼んで、お義兄さんが歩いて迎えに来てくれて、帰り道運転してくれたらいいのに。


 そうだ、ミラー見なければいいんだ! でも外暗いから外が怖いよー!


 もう嫌だ。自害しよう。変な勇気が出てきた。


 その勇気のおかげで帰れた。


 仏壇の前の布団に戻る。なんで仏壇の前なんだよ! 怖いよ!


 寝よう。






考えすぎですね。

でも一回妄想が始まると止まらなくなっちゃう。

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