狼のはなし
昔々あるところに、一匹の狼がおりました。狼には、仲間がいません。ずっと一匹で過ごしていました。
ある日、このあたりに子供の狼がでるとの噂を聞きました。いつも一匹でいるそうです。狼は、子供の狼なら仲間になってくれるかも知れないと思い、探すことにしました。
小鳥さんに聞こうとしました。
しかし、逃げられてしまいました。
猿さんに聞こうとしました。
逃げられてしまいました。
犬さん、猫さん、ネズミさん、みんな答えてくれません。なぜなら、彼は怖い狼だからです。どうしようもなくて、途方に暮れていると、木の上から誰かが話しかけてきました。
「どうしたの?」
「……聞きたいことがあるんだ。でも、誰も教えてくれないんだ。みんな逃げちゃうんだよ。俺が狼だから……」
「そっか。僕にわかることなら教えてあげるよ。おにーさんと僕は似ているからね。」
「ほんと?……実はね、俺、仲間がほしいんだ。ずっと一匹で生きてきたけど、やっぱり寂しくてね。」
「じゃあ、僕がなってあげるよ。」
「え?」
木の上から降りてきたのは、子供の狼でした。
「僕も狼だからね。おにーさんの気持ちわかるよ。はぐれ狼同士、よろしくね。」
そして、一匹と一匹が出会い、二匹の狼になりました。二匹は、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。
ーー
懐かしい話を思い出した。俺らの先祖が出会ったときの話。このあと、しばらくは二匹に暮らしてたんだけど、もっと仲間がほしくて旅にでたんだ。そして、はぐれ狼たちを仲間にして、新しい群を作ったんだよね。その群が、俺のいる群。この話は語り継がれているんだ。偉大な先祖の話として。そして、俺は先祖の生まれ変わり。この群は代々生まれ変わりが率いているから、俺は産まれたときからリーダーだった。もちろんアイツも一緒だ。年齢差はいつも変わらない。あの子供の狼。とても感謝しているんだ。俺をあの世界から連れ出してくれたことは。だから、あの子供の狼が産まれると、必ず俺が育てるようにしている。いつまで生まれ変わりが通じるかわからないけど、産まれる限りはいつも一緒だ。
これからも、変わらな毎日が過ごせますように。