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友達未満  作者: ちぇる
4/10

少年と腐れ縁

ーーーそして今は、うかつにも出会ったばかりの少女に「また今度」などと言ってしまった翌日であるわけだが。


コウジは、ため息のような深呼吸のような、どっちつかずの空気を吐き出す。

麻美に対して生まれた、ある気持ち。

コウジの性格からすると、違和感しか得られないような気持ち。

それを言葉にするとしたら、好奇心、というのが一番近いのだろう。


コウジは制服の袖に腕を通すと、整理しきれていないモヤモヤした感情を振り払うように家を出た。




ーーーいつもより大分早く学校に着いた。まだ少し冷たい、静かな風が頬を撫でる。

教室に足を踏み入れると、先客がいた。コウジにとっては見慣れ過ぎた顔だった。

「おぉコージー。何だ今日早いなぁ?」

「•••お前こそ。朝練どうしたんだよ」

「いや今日朝練休みなの忘れててさー。参った参った」

教卓の上で足をぶらぶらさせながら、クラスメイトの林は白い歯を覗かせて笑った。


林はただのクラスメイトではなく、コウジの幼馴染だ。持ち前の運動センスを見込まれ、今はバスケ部に所属している。


「ふぅん」

ケラケラ笑いながら話す林に、コウジはどうでもよさそうに呟いて自分の席まで歩いた。


「で、俺の話聞けよコージ!何でこんな早いの?」

「•••。」

林は淡白なコウジとは間反対の性格の持ち主。このまま無視しておくと、1日うるさそうだ。

早く家を出た理由になるか分からないが、コウジは昨日のことを話してみた。腐れ縁とはいえ、コウジは彼のことを信用していた。クラスメイトの幼馴染で、目が見えなくて、コウジが好奇心を抱く少女、麻美のことを、彼に話してみた。彼女のプライバシーに関わるようなことではなく、一つの彼の体験談だ。別に問題はないだろう、と。


一通り話し終えると、林は少し間をおいて言葉を発した。

「ふーん。お前が誰かに興味示すなんて珍しいな。あ、もしかして好きなのか?LOVEのほうなのか⁉︎」

その言葉に、コウジは黙って消しゴムを投げつけた。林は黒板前の教卓に座ったまま、それを紙一重でかわす。消しゴムが黒板に直撃した音の大きさが、コウジの苛立ちを代弁していた。しかし林は何事もなかったかのように会話を続けた。


「じゃあ何?友達になりたいってことか?」

「•••別に。よく分からん」

相変わらず素っ気ない返事をするコウジをよそに、林はこう付け加えた。


「友達になりたいっていうのもアリだけどさ、会ってすぐにそれ思ったってことは」




「目が見えなくて可哀想だからっていう、同情みたいだよな」



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