少年と2人
ーーー『盲目』とは、目が見えないこと。
しかし、全ての人が全く見えないわけではなく、全盲の人は視覚障がい者全体の1割しかいないと言われている。残りの9割の人は、個人差はあれど多少は目が見える『弱視』である。
コウジの目の前にいる少女、麻美からは、大人しい印象を受ける。
背は160もないだろう。髪は肩ぐらいまでの長さ。(セミロングというやつだろうか)毛先は内側にカールし、風が吹くと麻美の顔をくすぐる。
大人っぽさの中に可愛らしさもあり、清楚という言葉がしっくりくる。
ーーー橘とは大違いだな。
コウジが毒を吐いた。
自分が清楚という言葉とは程遠いと思われている事を、絵里は知らない。
「今は盲学校に通ってるの。で、時間の合う時はあたしと遊んでるってワケー」
語尾をのばして緩く話す絵里だが、今の言葉はこれ以上聞くなというサインなのだろう。
ーーー別に聞く気もないが。
俺には関係のない話。関係のない人の話だ。
コウジが心の中で無愛想に呟く。
すると、また鈴の鳴るような声がした。
「浅羽さん、絵里ちゃんのクラスメイトって事は同い年ですか?」
「え、おお•••」
コウジは間の抜けた返事をする。
「私たち、これから喫茶店に行くんですけど、一緒に行きませんか?」
「••••••。」
沈黙。
麻美の突然のお誘いに、コウジの頭は混乱する。
(初対面の•••いや、まだ対面していないわけだが•••幼馴染のクラスメイトっていうだけの得体の知れない男をなぜお茶に誘う⁉︎)
絡まった思考を解こうすると、更に絡まる。
鳩が豆鉄砲を食らったような•••まさにそんな顔をしているコウジに、絵里がニヤニヤしながら弾んだ声をかける。
「いいねー!浅羽っ、時間ある?」
「いや、行かねぇから•••」
「えー何でー?」
「特に理由はない。あるとすれば俺は帰りたい」
不満そうな絵里の隣には、少し残念そうに笑う麻美が並ぶ。
きっとこの笑みが、コウジの口を滑らせたのだろう。
「また今度な」