少年と再会
昨日彼女と会ったのは、駅から家へ帰る道の途中。恐らくそのあたりだと思うのだが。
コウジはひとまず電車に乗りこみ、そこまで行くことにした。もし間違っていたら、そのまま補習が終わる頃まで近くを探すつもりだった。
ーーー探す?
コウジは自分の中の違和感に焦点を当てる。
ーーーオレの方から会いに行ってるみたいな。いやいやいや、そういうわけじゃない。彼女は目が見えないわけで、橘との連絡もどうなってるのか分からないわけで、もし何も分からないまま歩き回ってたりしたら危ないわけで。
だから、保護しに行くだけだ。ちょっとした人助けだ。気まぐれだ、気の迷いだ。補習のことだけ、それだけ伝えに行こう。
ひととおり、言い訳を並べてみた。神経衰弱のトランプのように、心の中全面に。
彼女に会いたがっている自分がいる。そんな可能性は、ポケットの中にでも隠しておいた。
プルルルルル…
『○○行きが参ります、黄色い線の…』
コウジの向かい側のホームに電車がくる。風で前髪が揺れる。
学生の甲高い笑い声を耳障りに思いながら電車に乗り込む。電車は揺らいで、時刻通りに進んでいった。
コウジの家の最寄り駅。ホームの広さが無駄だと思えるくらいに、この駅で降りる人は少なかった。
電車が発車して見えなくなると、ホームには静けさと、一人の少年しか残らなかった。
改札へ向かう階段へ足を向けようとした時、彼女が目に入った。盲目の、昨日出会った、今日会おうとしている、彼女が。反対のホームで杖をカツカツ鳴らしている。
ーーー学校に行く気か?ってことは橘と連絡はとってるのか?
しかし、考えるより先に少年の足は動いていた。階段を駆け下りた。足がもつれそうになって、一段飛ばした。回れ右して、向かいのホームへ向かう階段を駆け上がる。
トゥルルルル…
電車が来る。息が切れる。それでも構わず駆け上がった。
プシュー…
階段を上がって、景色が開けた。見えた。
点字ブロックに沿って、行儀よくたっている彼女が。
ーーーちょっと待て。
電車に乗り込んでしまう。
「待っ……」
走って手を伸ばす。気付いていない。
ーーー待てって。ちょっと待て。や…
「柳!!!」
プシューーっ……ガタ、ゴトンゴトン…
「……浅羽さん…?」
電車はありきたりな音をたてて動き出した。ホームには、少年と、少女。




