休憩
「、、、何か言われたりしてない?」
騎士は、スポーツドリンクを渡しながら心配そうに麗華に尋ねる。
「大丈夫、なんでもないです。」
騎士はかなり近い距離で麗華の横に座ると、健介から受け取った扇子で麗華を仰ぐ。
麗華は距離感に思わず驚いてしまうが、これがこの子の当たり前の距離なのだと察した。
「ごめんなさい、」
「?何がです?」
「こんな道通らなくても僕の家には行けますし、それ以前に普通はバスを使うんです。でも、麗華さん、軽装だったから、僕の一番好きな景色を見てもらおうって、、冷静に考えれば、何も説明せずに、そのサンダルだと歩くのもつらかったですよね。すみません」
騎士は先程までの軽い感じではなく、弱々しい声で反省し、深々と頭を下げる。
「、、綺麗ですよね、ここ。見せてくれてありがとうございます。」
麗華が笑いかけてくれたことが嬉しかったのか、騎士は仰ぐ速度を上げる。
「でも、正直、ここまで体力が落ちているなんて思わなかったです。
去年とか今日より全然暑い日の炎天下で6時間とかイベントに出てたのに比べれば全然なんともなかったのに、、、」
麗華は、手にしたスポーツドリンクを横に置くと、騎士に聞きにくかった事を今なら聞きやすいかもと思い口にする。
「私の事、どこまで聞いていますか?」
「、、、どこまでって、何の事ですか。」
騎士は何も知らないていで即座に麗華に返答する
「水野やえ、私の芸名、知ってましたよね。」
だが、時すでに遅し、一番最初に油断している時に思わず、彼女を芸名で呼んでしまっていた。騎士は観念し、傷口を広げないように、言葉を考える。
「、、、、ネットに上がっている程度の事は、でも、どこまで本当はか、お母さんからは余計な気を使わないように言われていて、僕が勝手に調べただけです。」
「そう、、つまりはそういう事、、だけど、あまり気を使わないでください。
気を使われる方が正直しんどいですし、それに、私自身。周りの人が思うほど
落ち込んだりはしていないんですよ。あれ彼結構経ちますし、今じゃ自分で冷静にネットの自分の記事を見るくらいはできるんですよ。」
「誰にだって失敗はあります」
「私は失敗なんかしてない!」
麗華は感情を荒らげる。騎士はその様子に驚いて傷つけてしまったと、表情を曇らせる。
「、、、、」
「私のせいじゃないんです!信じてもらえないかもしれないけど、あれは、、、」
麗華は会って間もない騎士に、必死の自己弁護を始めるこれで何度目だろう。
それでも彼女は自分が思うほど冷静でも、気持ちの整理もついておらず、私見を交え、感情先行で本当の事を話していく。騎士はそれをただじっと相槌を打ち、真剣に聞く。
「、、、、信じてもらえませんか?」
「信じますよ。麗華さんの事、」
「信じてくれるんですか?」
「?当たり前じゃないでしょか、そっちの方が納得です、麗華さんが落ち込んでいる理由。
麗華さんは強い人ですね。僕だったら、その人たちにグーで殴って一発仕返ししてすぐに逃げ出す自信があります。」
「意外に過激なんですね。でも強い訳じゃないんです。自分の中で決められないだけなんです。ここで辞めてしまうと今までのものが全部なくなってしまう。
それが嫌で結論の先送り、自分でも今更、戻れるなんて思っていない。でも他にやりたいこともないし、辞めるだけの決断もできないだけですよ。
結局この島に来たの、心機一転でも、リスタートの為のリフレッシュでもない。
ただ逃げたいだけ、結局逃げられないようなことをしでかしてるんですけどね。」
「分かります。何かをやるのも、何かをやめるのも覚悟がいります。
ただ、僕の本音は、麗華さんには逃げ出してほしいという事でしょうか、」
麗華の体調も少し回復したので、騎士は歩きながら、少し先を指さし、神社でしっかり休もうと麗華に提案する。