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虹の島

それから1年。麗華はみるみるスターダムを駆け上がっていた。忙しすぎて、

今年の精霊祭には来るつもりでいたが、仕事が全然空かずに、結局あれから一度もこの島にはこられていない。

もうまもなく、今年も精霊祭が始まる。去年の精霊大祭に比べれば規模の小さなものだが、それでも去年のことが有名になり、今年は過去最高の観光客が訪れている。

そして、この精霊祭を有名し、麗華をスターダムに押し上げる後押しとなった動画を

騎士は公園のベンチで携帯の小さな画面で眺めている。

その動画は精霊祭の麗華の歌のシーンに、ライジングスター、そしてつばさと一緒にもう一度歌ったライジングスターが見事な編集でまとめられた動画で、再生回数は当時動画サイトのトップランキングに軒並みランクインした。

その動画を見ながら笑っていると一人のサラリーマン風の男がかれに話しかけてくる

「まずは第一段階として、つばさの動画を全て含んだバージョンをアップし、その後、ヒット数が伸びたところで著作権に引っかかる箇所の除き、未発表のデビュー前のライジングスターの動画だけを残し、その後、その動画の中心もつばさ中心から彼女中心のものに差し替えていく。

と同時に海外には自前のコネクションを使用し、10年に一度の日本の伝統的な奇祭と、日本特有の未成熟な『アイドル』という面を前面に打ち出し、そこに至る創作を加えたエピソードで拡散を行う。

そこまでがうまくいったことを確認すると、事実と虚構を織り交ぜ、彼女とつばさのドラマチックな関係性を匿名で語る、この時一部でも事実に基づくものを提示することで部分的な事実の断片が、その創作の全てを事実であるかのように思わせる。

そしてつばさ自身、善し悪しにかかわらず、言いたい人には言わせておけばいい自分は自分のやりたいようにするだけというスタンスを知っての行動。

そして止めは謎のサイトを立ち上げ、そこであの時の事故の真実を語ると当時に、彼女が内密に出ることになっていたつばさのライブを示唆するような暗号めいた文字を出す。

あの短期間でよくもまぁこれだけのことをやったものだな」

「いくらあの事故が他者による作為的なものであるとしても、その本人が訴えたところで、僕のような個人がいったところでなんの意味もない。」

「だからこそ、今まであんなに確定的な映像があるにも関わらずに黙っていたのか、あの映像はどこから」

「とある筋から、とでも、言う訳ありませんよ。教えてもなんの得にもならない。

マスメディアで報じなくてもソーシャルを通じてここまで規模の波を起こせる。そういう時代の変化の証明になりましたか?」

「残念ながらそれは君が初めてじゃない。海外のみならず、今やこの国では当たり前の光景だ。」

「どうしてここに?」

「この事前の様子を含め、部外者が知る由もない映像があれほど豊富にある時点で、この島にゆかりのある人間。そして彼女をスターダムに押し上げたいかつ、彼女と関係性のある人間で、ここまで出来る人間。だが、正直、まさか父親ではなく、まさか君の方だったとは、私が訪ねてくることまで予想通りかい?」

「関係者からたどるのではなく、自力でつきとめられるとは思いませんでしたよ。だからこそ、これは僥倖です」

「僥倖?」

「あなたがそれほどまでに優秀で、それほどまでに僕に興味を持ってくれたということでしょ」

「なるほど、だが、君が思うほど、私は君のことを評価はしていない。

君は環境に恵まれていただけ、物見遊山で顔を見に来ただけだけだよ。

一度干された彼女をそこまで救おうとした奴の顔をな、」

「……」

「で、結果は、彼女に好意を寄せる熱狂的なファンだった。」

「それは少し違いますね。僕はファンじゃない。ひとりの男として彼女をモノにしたい。そのためには力がいる、彼女に並ぶだけの力が、」

「君にはそれだけの才があると」

「いいえ、だからこそ、こうして助けて欲しいと懇願しているんです。僕に力をください。」

「だったらまずはいい大学に行ってうちの面接を受けるといい。うちは高学歴優先でね。それさえあれば才能もいらない。」

「でも、それだけじゃ、上には行けやしない。」

「会社のトップになりたいなら、自分で会社を立ち上げるしかないな。そしてうまくいったとしても、それでも、君の望むものが手に入る頃には君は白髪まじりの中年だ。

その頃には彼女もアイドルを引退し、とおの昔に普通の幸せを満喫してる頃だろう。」

「世界一のプロモーターになるにはどうしたらいいですか?」

「口が上手く、頭が回り、何より運がないと無理だな。実績を作ることだ、それでもケタ外れの想定外のな。」

「……」

「とは言え、君に何も期待しないわけでもない。大学へは?」

「行く予定です。今は受験勉強の最中です。」

「もし、君がその気なら東京に来い、そこで大学をしながらうちでバイトをすればいい、過酷だが、それでも可能性はある。」

「まずはアルバイトからですか、そのために東京の大学、本末転倒だ。しかも将来も保証されない。」

「安定を望むならうちの業界はおすすめしない。うちは格差の激しい商売だ。最もそれだけやりがいと刺激のある普通は味わ得ない体験ができるがね。良くも悪くもだが。」

「僕は平穏が好きなんですけどね。でも仕方がない、あれからいろいろな出会いを求めてみたけど、結局、僕は彼女の代わりで満足できるような人間じゃなかった。

名刺、頂いていいですか?」

「いいことを教えておいてやる、女に固執するとは身を滅ぼすぞ。」

「僕の場合は純愛です。大人の価値で語らないでください。」

翌年の3月、騎士と健介はこの島を出て行った。

「今日も平和だね、」

「少し、静かになりましたかね、、」

「ま、それもいいさ、どうせそのうちまた騒がしくなるさ、今はこの平穏を楽しもう。アイス食べる?」

「いただきますわ、朧様」


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