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麗華の歌

麗華は健介に自分が何者なのか、どうしてここにいるのか、そしてどうして、戻らないといけないのか、すべてを健介に話すことはできない。

話したくないこと、話せば健介の重荷になることは避けて話をしたが、

それとなく、健介は麗華の表情から読み取った。

「だいたいそんな感……」

話し終わると、恐る恐る、麗華は健介の顔を覗き込んだ。

正義感の塊のような健介だ、いじめにも似たような嫌がらせのせいで、今の状況にあるということを伝えた以上、怒っているはず、、案の定健介は明らかに怒っているが、

怖がっている麗華に気づき、一度深呼吸をする。

自分の中の正義よりも、麗華のことを気遣うくらいには、麗華のことを考えられる。

「……俺だったら、自分の正しさを言い続けて、それでもだめならきっとぶん殴って辞めてると思う。でも、それでも君は夢を追い続けようとしている。

それは素直にすごいと思う。素直に尊敬できる」

健介は彼女のことを自分とは違う甘ちゃんだと思っていたことを素直に反省する。

自分はどこまで行っても自分を貫こうとするその貫くこと、決して折れず、曲がらず、それが強さだと考えている。

でも、彼女のように何度だって、自分の弱さを知って、目の前にある苦難を前にしてもそれでも前に進もうとするその姿勢もまた彼の理想とする強さそのものだ。

そう理解できたから、ここで彼女を止めるべきではない。

「、、、少しは落ち着いたか?」

「、、うん、まぁ、」

「そうか、だったら、もう大丈夫だろ。、最後に一つ頼みを聞いてくれないか?」

「内容次第、、かな」

「俺はこれでもお前の味方でいるつもりだ。だから、頑張ってこい。それで、もし、それでも、駄目なら、いつでも俺を頼れ、何でもできる人間じゃない、でも、その、、どんなことがあっても俺が守ってやるから、」

「うん、わかった。ありがと、やっぱり一人でもファンがいてくれるのはうれしいな。」

「い、いやそういう、、あ、ぁ、そうだな」

「でも、ちゃんと歌を聴いてファンになってほしいから、」

麗華は少し距離をあけ、健介のために歌を歌う。

今まで歌なんてほとんど聞いたことのない健介だったが、麗華の歌は確実に健介の心に届いた。健介の心には感動、そして大きな劣等感が広がった。

彼女がどれだけ努力しているのか、伝わってきた。自分と年の変わらない、この女の子が、自分よりも確かに夢に近づこうと一生懸命、だが、彼女の歌を聴いているとそんな劣等感を感動が支配していく。

彼女の歌が終わると、健介は素直に拍手をし、素直に称賛の声を送った。

興奮し、感情のままの言葉、一切の世辞や気づかいではなく、健介の本当の言葉。

だからこそ、歌になんて興味のない健介の心に届いたということを実感できた。

そして思い出した、誰かの為に歌えることを、喜んでくれることを、いつのまにか自分の為になっていた歌。歌うのは楽しい、踊るのも大好きだ。でも、それだけじゃない、

誰かの為に歌うのが好きだったんだ。自分でも力になれる、必要としてくれるそれがあったから自分はアイドルになりたいと思った。つばさにひかれたのもそうだ。彼女の歌が自分に力をくれた。そして彼女のようになりたいと思った。

そして少なくとも今、目の前にいるこの音楽にも興味のなかった健介を自分の歌で喜ばせることができた。それが彼女の自信になった。

「それじゃ、皆帰っちゃう前に、行くね。」

「ついていかなくて大丈夫か?」

「うん、大丈夫。だって健介君にお墨付きもらったんだし、自分の力でやってみたいの、」

「そうか、わかった。頑張ってこい、俺はいつでも応援しているし、

もし駄目だったらいつでも呼べよ。どこにいたって助けに行くから、俺が守ってやる。」

健介は力強くこぶしを掲げる。

「わかってる。頼りにしているから」

麗華は健介に別れを告げ、急いで本殿に戻っていく。

頼りにしているといわれたことがうれしかったのか健介はまるで子供の用に麗華の姿が見えなくなるまで、手を振って見送った。

そして麗華は健介が見えなくなると、一旦足を止め心を落ち着ける

やばいよ、あんなのあんなこと言われると好きになっちゃうじゃない。

そんなに鈍くないよ、健介君、でも私は器用じゃないから、あれもこれもなんてできない

だからお願い、私が夢をかなえるまで、誰のことも好きにならないで


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