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トラウマ

突然の言葉、この場にいる多くの者が何を言っている、この子は誰だとざわつき出す。

一同はその疑問を目線で愛理に投げかける。

「確かに、彼女にはその資格があります。舞も歌声も申し分ない。」

「申し分ないと言われましても、見たところ彼女はこの島の人間ではないのでしょう。」

「だからなんだというのです?本来それは私も同じこと、何より彼女はその道のプロ。

現役のアイドルですよ、素人とは筋がちまいます。私の代役ということになれば、そういう立場で私が唯一本気で教えた彼女以外にはありえない。

ですが、麗華さん、今のあなたは人前で歌えますか?踊れますか?」

あたりが彼女が何者かを察しざわめき立つ、彼女が例の、、化粧もせず、普通の格好で髪型も違う彼女が以前ここで話に聞いた女の子とは誰もが思わなかった。

容姿より何より、今の彼女には想像していたほどの悲壮感が感じられず、想像していたよりもずっと強い印象を受ける子だった。

皆がざわつく中、彼女は背筋を伸ばし、しっかりと通る声で

「できます!というかやります。私にやらせてください!」

愛理のためにそう思うことで彼女は自信を持ってそう答えた。

「分かった、そこまで言うのならお前に任せてもいいだろう。」

彼女の言葉にざわつく中、中年の男性が島の外の彼の除のことを気に入らないのか、高圧的な物言いで話しかける。

「だが、聞いた話では、お前は人前に立つことが怖くて、養生のためにこの島に来た。

なのに人前で踊れるのか?」

「それは、でも、もう克服しました、できます」

「そこまで言うなら、まずは見せてもらおう、今ここで、」

「ここで、ですか?」

「そうだ、本番は百人以上がこの祭りを見に来るそんな中で踊らないといけない、克服したと言うならできるだろ、」

売り言葉に買い言葉、彼女はその言葉に答え、今までどおりのことを見せようとする。

そのために目を閉じ、彼らに自分の歌で驚かせようと思いっきり、息を吸い込み、第一声を発しようと、目を開いた時、彼女が見たのは多くの疑いの目で見つめる男たちの目。

それにさらされた瞬間、彼女はあの時の失敗を思い出し、言葉に詰まった、

言葉だけじゃない、動けない。

「?どうした、やっぱりできないのか?」

必死に声を出そうとする麗華だが声が出ない、体が動かない。

それどころか、だんだんと自分に対して、やっぱりな、どうせ口だけ、など自分に向けられた視線が猜疑心から、絶望に変わっていると思い込み、ますます焦り、必死になんとかしようとする。だが、ついには呼吸すらままならなくなってきた。

「朧兄様!」

愛理の言葉で朧が中断を宣言するよりも先に、麗華はその視線を大きな手で覆われ、力任せに、頭を捕まれ、引っ張られる。

事情を知らない健介であったが、今の麗華が普通ではなく、今まで見ていた麗華の不安や焦りの原因がこのことだということはなんと言うことは理解できた。

「さ、行こう。」

健介は半ば強引に部屋から麗華を連れ出していく。

突然の行動に大人たちが止めに入るが、健介はその眼力で大人たちを静止する

「と、いうことです。いきなりは無理ですよ、それに彼女は島の外の人間です。やっぱり俺、太鼓た叩くのやめます。愛理さんに無理はさせらないでしょ。いいじゃないですかもともと大した祭りじゃないでしょうに、老人たちの余興に俺たち若者を巻き込まないでください。俺たちはあんたたちの人形じゃないやりたけりゃ勝手にやってろよ。」

わざと相手を怒らせるようにし、批判も視線の対象も麗華から自分に移す。

彼の言葉に激高し、彼を諌めようと声を荒らげ、制止を促すが、健介は全く聞かず流れるように神社の境内から出て行った。

そうしてわけもわからないまま連れ出された麗華は、山の途中のベンチに座らされ、頭に冷えたスポーツドリンクの缶の角で小突かれた時にようやく、少しだけ自分を取り戻していた。

「大丈夫か?」

「、、、わたし、戻らなきゃ。」

体育館で水をぶっかけた時のように、何かに取りつかれた表情で、健介の制止も一切耳に入っていないかのように急ぎ足で山道を登る。

「落ち着け、」

「早く戻らないと、やらないと、できるって、私なら、できるって」

健介は、そんな麗華を止めようと、腕を掴む。

「まずは落ち着け、今の君は普通じゃ、、」

「離して!」

「いいから、いいか。」

「離せ!」

本気で激高した麗華の声に、思わず健介は驚き体が反応するが、それでも手を離さない。

「私は、やらなくちゃいけないの!私はもう大丈夫だって!ちゃんと、歌えるし、踊れる!ここで終わりなんかなじゃない!できるって証明しないといけないの、、、、」

麗華は自分自身に悔しくて思わず涙が出る。

そのあまりの迫力に、健介はゆっくりと手を離した。

「僕は君の事情を知らない。君の何がそうさせるのか、君の事情も、君の本当の気持ちはわからない。

でも、君の力にはなりたいと思っているし、それに何より、泣いている女の子をほうってなんておけない。俺に力にならせてくれ、頼む」

健介は頭を下げる、力ではなく、心で、彼女を止めようとする。

彼女のことを思っての言葉、それは確かに届き、彼女に落ち着きを取り戻させた。


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