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麗華の舞

「そうそのまま、ストップ。少し軸がぶれているわ、体の芯を意識して、ゆっくり、そう、あと呼吸も気を付けて、そのまま前に、軸を移動しながら、円を描くように、その時腕の付け根を中心に、ゆっくりと、それぞれの動きを繋げる事ばかり考えずに自然に、力は入り過ぎ。はいストップ。」

愛理は動きを止めた麗華に触れ、姿勢を修正する。動くなと言われても、この儀式用の服では重みがるし、何より、じっとしている事がつらい。

舞の指導を受け事1週間、月も変わり精霊大祭まで2週間を切っていた。

「お疲れ、アイス食べる。」

朧は、練習を終え、縁側でへばる麗華にアイスを差し出す。

「麗華、着替えて来てから。」

すっかり師弟関係のようになった麗華は愛理の指導に従い、着替えに部屋の奥へ

「愛理もお疲れ、」

朧は愛理に扇風機の風を向ける。

「偉く厳しく教えているようだけど?厳しすぎじゃないの、あれもう十分でしょ」

「えぇ、今のまま舞っていただいても何の問題もないですわ。」

「趣味で教えているにはやり過ぎだね」

「やるには本気で、ですわ。ですが、逃げ出したとはいえ、アイドルの端くれ、飲み込みとバランス感覚は流石ですわ。」

「普通、あんな速度で動かないからね、なれれば結構自然に出来るんだけどね。」

「麗華は、少し頭で考え過ぎなところがあります。まぁ、あれは今までずっとそうしてきたというところがありますから、今すぐに修正しろという方が難しいでしょう。

感覚よりも頭に頼るタイプのようですし、一つ一つ動作の切れは良いのですが、どうしても、終始一定速度での連続性を持った動きになれる事はないでしょう。」

「短距離走は得意だけど、マラソンは苦手、、」

「まぁ、表現的にはそれでも、、、私としては常に動くサッカーよりもそれぞれに間のある野球の方が得意というべきでしょう。それに先ほどのように一人で舞わせるとどうしても動きが硬くなりますが、手本を見せながら合わせるのは得意のようですね。」

「だったら今みたいに、一人で横から口を出さずに、それを繰り返してある程度体に覚えさせればいいんじゃないのか?もし、本気で舞を習得するなら」

「ですから、一番それに時間を取るようにしています。が、それでは良くても私の八割の模倣に過ぎず、そこに思考がなければ思いが宿らない、それでは精霊、人の心は魅了できません。いかな芸も武も模倣に始まりますが、思考によって、理解を経へ、習得に至るものです。自ら考え、そこに心を込める事が必要なのです。心なき舞に価値などありません。

敬意と感謝と畏怖と歓喜、それが必要なのですよ。分かりましたか?麗華」

少しも見ていないのに朧の後ろの襖に隠れ、出るタイミングを伺っていた麗華に語りかける。別に盗み聞きをするつもりはないが、良い話でも、悪い話でも、自分のいないところで自分の話をされてしまうと、どうしてもその中には入りにくい。

「アイス、、、少し溶けてるけど」

麗華は朧からアイスを受け取ると、縁側で愛理の近くに座る。

「踊る事は好きですか?」

愛理は麗華を見もせずに唐突に尋ねる。

「、、、好き、ですね。その間だけはどんなに嫌な事も忘れられますし、そりゃ、うまくいかなくて悔しい事もありますけど、思ったとおりに体が動いてくれた時は、その分も含めてやっぱりものすごく楽しいって思えます。

今も、愛理さんに教えてもらってうまくなっていくのが実感出来ますし、」

「だったらもっと自分を出しても良いのですよ、色々と注意はしていますが、その事ばかりを意識する必要ない。先ほども申し上げましたが心を込める。

その中でもあなたの中に特に足りないの歓喜、つまりは舞を、歌を楽しむ心です。

本当に楽しいと思えていますか?完璧なる模倣、その達成感を楽しいと思う事もいいでしょう。ですがそれがあなたの原点ですか?

最初に教えましたね。精霊祭の歌や舞には今でこそ型がある物の、通常の神前のそれとは違い。本来型などなく、表現すべき物語もないと、

あなたはいつも頭の中でやるべき事ばかりを考えている。

次はどうすべきか、今はどうなのか、体の位置は、腕の角度は、目線は、それらも必要な事ではありますが、

それだけを意識して私をまねしたところで、私に限り無く近づくだけ、

あれは私の動きであってあなたの動きではない。

だからいくら近づけても違和感が出てしまう。それよりも、あなた自身が自信を持って、あなたの思うように舞えれば、自然な動きとなり、あなたの舞は、あなたの物になります。

先日、お姉さまに頼んであなたが踊っている様子と歌の様子を見せていただきました。

率直な感想を申し上げます、非常に完成度が高く。あなたが真面目に言われたことを守り、努力したことが見て取れました。ですが、私の心は少しも惹かれませんでしたし、

何より、私はあなたの姿に朝霧つばささんの姿が見えました。

しかし、彼女のような自信も、信念も、そしてあの情熱もない。

ただ完璧を求める必死さ、そして自己満足が見えるだけです。

なぜこのような厳しいことを言うか分かりますか?

あなたは私が舞と歌を教えようと思ったのは、あなたの中に私を超えたいという気持ちがあったから、あなたは努力で私を超えるという強い情熱があったから、

でも今のあなたはそれを忘れ、ただマネをしているだけ、それで自分に満足し始めている。

私やつばささんを、貴方は才能を努力で超えるのではなかったのですか?

趣味であるのなら、自己満足で結構。

ここがあなたの分岐点です。

今のままでは決してあなたは人を魅了できない。戻ったところで同じです。」

「愛理、言い過ぎ。」

「本当の事ですわ。今日の麗華の満足した顔を見て、私、気になりましたもので、

別に攻めている必要はありませんわ、ですが、朧兄様がそう感じられたのでしたら、私自身、自分の感情のコントロールが出来ていないという事でしょう。頭を冷やしてまいります。失礼。」

愛理がいなくなった後、麗華はその場で俯き、暗い表情で沈み込む


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