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夜の散歩

騎士のどこかいけないか、だんだん悪乗りして盛り上がっていることなど露知らず、

騎士は一人テンション高めで島の沿岸部を一周していた。

柄にもなく、声を出したり、自転車の上で両手を話し意味不明なポーズを取ったり、人気がないことを言いことにやりたい放題。誰かに見られていたら事故を次々と重ねていく。

普段の騎士の見る影もない様子で十分に楽しんだ後、帰宅の道中、珍しく愛理に出会う。

「あれ、こんな時間にお出かけですか愛理さん」

「あら、あら珍しい。今どきそんな古風な挨拶を聞くなんて」

「いや、古風とかじゃなくて、」

「ちょっと夜這いに」

「、、、、、、、」

「なに、意外に乗ってこないわね、冗談よ。」

「分かっていますよ。で、どこまで行かれるんですか?顔なじみがほとんどって言っても、こんな場所まで歩いてきて、神社への道ほとんど外灯ないですから危ないですよ。」

「心遣いはありがたく頂戴しておくわ、でも、問題ないわ、ちょっと本土まで野暮用を済ませに行くだけだから、」

「ちょっと本土までって、、もう船でてないですよね。」

「あらそうなの知らなかったわ。」

「なんで知らないんですか、、あぁ、でも、確かにあまり愛理さん島の外に行っている印象がないですね。」

「そうね、まぁ、あなたは堕落と快楽を求めてちょくちょく島を出ているようだけれど、私はここで十分だから島の外には魅力は感じないわね。」

「せめて娯楽を求めてと言ってください。。」

「なに、今日はやたらノリが悪いわね。」

「だって僕と愛理さんしかいないわけですし、僕、元々あんまり下ネタ好きじゃないですし、愛理さんのネタに誰もほかにいないのに付き合うのはちょっと、、、」

「あら、色恋沙汰は生き物の本能で、昔から廃れる事のない最も純粋な娯楽よ。そこを否定するなんて、まだまだ子どもね。」

「それが本能に属する娯楽なら、僕は理性に属する娯楽を取らせていただきます。

これだけゆとりのある時代に生まれたゆとり世代ですよ。楽しい事なんていくらでもありますよ。ゲームとか漫画とか、ヒーローとかロボットとか」

「そうね、価値観の多様化、子供の娯楽の変化はほんと時代の流れを感じるわ」

「あなたは何者ですか、、、愛理さんもめちゃくちゃ現代の技術や文化使いこなしてるでしょ。というより、僕より詳しいですよね、もろもろ」

「それは便利で楽しいもの、でも一番楽しいのは人の色恋沙汰や、若者の悩みに茶々を入れる事よ。なのに、あなたときたら」

「ゆとり世代の上に、自分の価値観だけを基準に生きています。タバコカッコ悪い、車入らない、無気力無関心無欲、日々の日常に感謝が目標です。」

「本気で言っているからすごいわ。まぁ、あなたの場合、物欲と知識欲は人並み以上にあるようだから理想には程遠いけど、、、まぁ、そうね。そんなあなたがいつか欲情におぼれるようになるかと思うとそれはそれで楽しみだわ。」

「確定事項ですか、、」

「確定事項よ。あぁ、ふと思えば、あなたのあのご両親を見ているわけだから、あなたの場合、初恋で全力で本気でそのまま結婚手いうタイプでしょうね、浮気とかできるタイプでもなければ、遊びで人を好きになったりもできない。一人の人を好きでいつづける事しかなく、交際イコール結婚という脳内構造。つまりは奥手。」

「何の話ですか、、、」

「別に、、、それより、もういいでしょ。夜も遅いから帰りなさい。もうそろそろ10時よ。」

「え、もうそんな時間ですか、まずいな、結構かかったな、」

騎士は携帯で時間を確認すると9時40分。家に帰るまでを考えると確かに10時になってしまう。

「さ、時間を思い出したところで早く帰りなさい。」

「愛理さん、家まで送りますよ。」

「気にしなくていいわよ。」

「でも、、」

「送り狼になるとも限らないし、大丈夫よ、朧兄様がもう少しで来るから、(嘘だけど)」

「分かりました、それじゃ、」

「えぇ、おやすみなさい」

愛理は騎士を見送ると再びマイペースに港へ向かって歩き出す。

町と港の照明も10時には消え、間もなくここは星と灯台のだけが照らす世界になった。

愛理はそんなことなど欠片も気にせず、港の舳先に立ち灯が煌々と輝く本土に目をやる。

「さて、島の外に出るのは何十年ぶりかしら。」

愛理は笑い、七つの橋を渡る。


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