帰り道
結局、途中までは二人で一緒に帰る事となったが、無言に耐えられなくなった健介が途中から走り出して帰ってしまった。
残された麗華は港近くの喫茶店で一人、オレンジジュースと麗華の為にベーコンの代わりに鳥のササミをボイルしたBLTサンドに特製ノンオイルサラダで遅い昼食をとる。
消費カロリーから行けばもう少し食べないと体が持たないが、昼はある程度抑えておかないと、朝はしっかり取るようにしているし、夜は騎士と鉄平に釣られ食べる量が増えるうえ、鉄平を待ってからの夕食の為、取る時間も遅くなってしまっているためそうも言ってはいられない。
食事を終えると日は傾き始め、もうそろそろ、夕方の船が到着する。
さくらの話だとお盆が近づくと、この港に多くの帰省する人がやってくるという。
特に今年は10年に一度の精霊大祭。一時的に島の人口が倍近くにも増えるらしい。
でも、今はそんなことなど想像できない程、閑散としている。
特に、今日は土曜日、いつも以上に閑散とし、釣り人くらいしか見かける事がない。
船が到着すると、一番最初に、自慢のマウンテンバイクを押して騎士が下りてくる。
先週向こうに行った際、父親と一緒に色々お店を回った後に帰ってきたため、マウンテンバイクを父親の会社においてきていた。
今日はそれを取りに行っていたのと、先週のように朝には空だった登山用の60リットルのリュックに荷物がいっぱい、それに自転車のハンドルに2つのエコバック、自転車には乗れない状態だ。
「麗華さん。僕を待っててくれたんですか?」
「えぇ、どうせそういう状態だと思ったから、荷物持つわよ。」
「嫌ですよ!女の子に荷物なんか持たせられません。」
「いいのよ別に、それとも何、私に見られたら困るものでも入っているわけ?」
「失礼な、」
そう言って騎士は自信満々にエコバッグの中を見せるが、見られて困る物のようにしか見えない。特にバッグの容積の大半を占める女の子の水着のフィギアはどうだろう。
「これも趣味?」
「あぁ、これはアメリカのレイマンさん36歳の依頼の分ですよ。前頼まれた限定カラーが残ってるのを見つけたから、送料考えるとむしろ若干損なんだけど、いつもお世話になっているから、恩も売れるしね。」
「そ、そう、いい趣味ね」
明らかに未成年にしか見えないフィギアを中年男性が、、、
結局、麗華は自分の荷物だけをもって一緒に帰る事になった。
その道中、麗華は騎士に今日の出来事を話すと、騎士は健介が両親が嫌いな事も、この島も嫌いな事も仕方がない事、それに健介はいい人間だよ、とだけいい少しも説得に協力する気もないようだ。
「そういえば騎士君は何でこの島の高校に行く気になったの?さくらさんの話だと騎士君の学力だともっと良い所に行けたんでしょ」
「ここから通うには遠いし、めんどい、学校なんて最低限は教えてくれるわけだし、あとは自分のやる気次第で何とかなるものだよ。現に英語とか結構全国トップレベルだし」
「寮暮らしとかは考えなかったわけ?」
「、、、健介が島を出たがっているのに、僕はそうでもないのが疑問?」
「いや、まぁ、そうかな」
「僕も健介も、この島の自然や環境は好きで、伝統だとか、お祭りには興味がないそこは一緒。そうだね、それでも違うのは親と家庭環境かな。僕が寮生活をしたがらないのもそれだね。あわてなくても大学に行けば一人暮らし、それからでも遅くないでしょ。
親と一緒に暮らす時間は18年。僕が80まで生きるとしてもその4分の一位だよ。
たかだか3年位焦る必要はない、僕はまだお父さんからもお母さんからも教えてもらう事は沢山ある。だったら、一緒にいるのは悪くないんじゃないかなって思うんだ。」
「確かに、、、」
たった一週間で鉄平とはほとんど話していないが、それでも騎士が両親に恵まれているのは紛れもない事実だ。
「僕は自分で分かるくらい淡白だから、きっと一度家を出ると戻りたいって気持ちは絶対に生まれないと思う。あぁ、両親の事が嫌いとかじゃないよ、ちゃんと愛情を持って育ててくれている事も知っているし、二人共の尊敬できる自慢の親だよ。
でも、それはそれ、古い考えかもしれないけど、男なら大人になったら自分の力で生きて行きたいって思うんだ。いつまでも親の手を離れないなんていやじゃない。だから僕は親元と離れるなら、もう戻らない覚悟をもってだね。
麗華さんは両親とは仲が悪いの?」
「お父さんは死んじゃったから、お母さんは仲が悪い訳じゃないし、嫌いでもない。
でも、仕事が忙しいし実の娘に気を使っているのは嫌かな、、、
たぶん普通の家庭よりも距離が遠いんじゃないかな。さくらさんみたいに自分の事をこんなに話す事もなかったしね。まぁ、私がアイドルになる時すごく反対されてからは、どうだろう、喧嘩した後仲直りはしてないから、やっぱり良くはないのかな」
「ふーん。それじゃ仲直りしたい?」
「それはね、仲良くというより、、、ううん、なんでもない。」
麗華は心の中でさくらに自分の母親を重ねていた、さくらは自分を応援してくれている。
私の踊るマネをしてくれたり、褒めてくれたり、もしお母さんもさくらの様に、認めてくれたら、頑張っている私を、でもそれは無理な事だと言葉を詰まらせた。
2人が家に帰ると、さくらと鉄平は二人を出向かる。
今日は夫婦水入らずで、買い物に、一緒に料理を作って、DVDで映画鑑賞で。二人でいう所のウチデートを楽しんでいたらしい、夜は炭水化物を避ける麗華だが、この日ばかりは鉄平提案のお好み焼きに付き合う事になった。




