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オーバーワーク

今日も夏休みで誰もいない学校の鍵を預かっている近所の顔なじみから、鍵を借り、校庭の用具室から自前のバットとグローブと備品のボールと取り出す。

その際、視線を体育館に移すと確かに何か音が聞こえる。音楽、明るい健介には耳馴染みのない音楽だ。

健介はそれをさほど気にすることもなく、自分の考えたトレーニングに入る。

健介は野球シューズもなければ、ユニフォームもない。

Tシャツにハーフパンツで、練習を始める。

壁に向かって、球を投げ続け、バッターボックスに立ってバットを振るだけ、それだけをひたすらに繰り返しお昼頃、学校の3時間目の終了をチャイムを目安に、練習を終え、片づけを始める。いつもであれば、このまま鍵を帰しに行くのだが、未だに続く、体育館での音が気になり、本当に覗くように、体育館の横の下の通気用の小窓から中の様子を伺う。

そこには音楽に合わせ、踊っている麗華がいる。

それこそ楽しそうに笑顔を絶やさず、だが、音楽が途絶えると、その笑顔はすぐに消え、辛そうに呼吸を整える。座ればいいとも思ったが、この感じは健介自身も記憶がある、一度座ってしまえば、もう立てなくなる。

鼻から汗が垂れ彼女の服の色が汗で完全に変わってしまっている。

いくら水分補給をしているとはいえまずい。だが、彼女はわずかの休憩時間で、再びなりだした音楽に合わせ、再び笑顔で踊りだそうとしている。

その様子を健介はしばらく見ていたが、流石に我慢できず、体育館に入り、強制的に音楽を止めた。

「ちょっと何するの!」

「オーバーワークだ!いい加減にしろ!お前また倒れる気が」

「覗いてたの!最低!関係ないでしょあなたには!」

テンションが上がり、疲労マックスの麗華は本気で健介に噛み付く。

「うまくいかないからイラついてるのか?」

「別に、ホント関係ないでしょ!帰って!」

「ふざけんな!少しは頭を冷やせ!」

「うるさいな!もうほんと帰ってください!邪魔しないで!私はあなたとは違うんです!やらなくちゃ、今やらなくちゃ!」

麗華は焦っていた体が思うように動かない、それに体が忘れ始めている。自分がどうしていたのか、分からない、完璧に出来たつもりで、携帯で撮った動画を見れば明らかにずれているし、何より動きにキレがない。

そんな自分が許せなくて、唯一の誇りだったものも失った。

そんなどうしようもないほどのイライラの状態で健介が止めろ、やり過ぎだと、怒り気味にいってきた。あまり健介にいい印象のない麗華は、この彼女の身を案じる言葉を余計なお世話、説教ととり、一切忠告を行かず、それどころか、なんであんたが私の限界を決めるのと余計に火をつけてしまった。

健介の説得も全く聞かない麗華に、健介もだんだん本気でイライラし始めてきた。

健介は麗華を残し体育館を後にする。

そして練習を再開した麗華、

「おい」

だがほどなく、健介の声が、麗華はムカつき振り返ると、有無を言わさず、健介を麗華に水を思いっきりバケツでぶっかけた。健介の腕力で放たれた水は生易しいものではなく、

痛みを伴い、麗華にかかる

「な、何すんの!」

当然怒る麗華に、健介は追い打ちをかけるように、横においていたバケツを取り、有無を言わず、もう一度麗華に思い切り浴びせた。

「頭冷えたか?」

「ふざけないで!!!なんなのよアンタ!」

あまりの出来事に完全にブチぎれた麗華が健介に向うが、ただでさえ疲労で弱り切っている足腰に、水で濡れた体育館の床、麗華はそれに足を取られ、本気で転んでしまう。

健介が彼女を助けようととっさにその手を取ろうとするが、靴下で入ってきている健介も一緒に倒れる結果となり、二人とも、汗まみれの上水浸しの状態になってしまった。

「ちょっと!」

「大丈夫か!怪我してないか!!!」

麗華が文句を言おうとしたが、健介の本気で心配し焦った声に言葉をさえぎられる

「、、、」

「どこかひねったりしたのか!ごめん、こんなつもりじゃなかった!」

慌てる健介が次次に目を泳がせながら、弱気に何度も謝りながら麗華の心配をする。そのあまりの落差に麗華は健介の焦りと反比例するように、冷静さを取り戻していった。

「大丈夫、怪我なんてしてないわ。ああ、でもおかげで、冷めちゃった。今日はここまで」

麗華は濡れた床に思いっきり、寝そべった。

「冷たいの、気持ちいいわね。」

「、、、ごめんなさい、、、、」

「意外ね、あなたみたいな人が素直に謝るなんて、それにおどおど、イメージに合わないわよ。」

「イメージとかはどうでもいいです。すみません。頭に血が上って、反省しています。」

「何よ、急に敬語、、、そうだ。本当に悪いと思ってるなら、、、」


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