ある日の朝
「よう、今日は早いな。」
港に続く道で騎士は5日ぶりに健介に声をかけられた。
「もちろん、」
そう言って騎士はイヤホンを取りランニング中の健介に合わせるように、疲れない程度に早歩きに切り替える、健介もそんな騎士に歩幅をそろえる。
「あぁ、今日は買い出しか、、、この間の子は一緒じゃないのか?」
「何?気になるの?」
「馬鹿!違ぇよ!普通一緒にいるもんじゃねえのかよ。ここじゃ遊ぶ場所もねえだろ。」
「学校の体育館、」
「はぁ?体育館なんで?」
「なに、今まで気づかなかったの?毎日グランドに行ってるのに。、」
「体育館の方にはいかねぇよ、それより、体育館で一人で何してるんだよ。」
「なまった体の基礎体力向上、と、ダンスの練習。」
「ダンス?好きなのか?」
「そうみたいだよ、なに、さっきから麗華さんの話ばっかり、何、僕という者がありながら浮気?最低、」
「お前本気で殴るぞ」
「冗談だよ。ノリが悪いな」
「まじめなだけだ、それにムカついたのマジだ。冗談だったら何でも許されると思うな。」
「ま、気になるんならのぞいてみれば、あぁ、のぞくといっても様子を見てみればという意味だよ、着替えてるところとかのぞいたらダメだよ。」
健介は若干力を込めて殴ろうとすると、騎士はそれを予測していたかのようにひょいっと避け、全力で健介から距離を取る。
こうなってしまってはもう駄目、健介はここまでランニングで大分疲労がたまっているし、
なんだかんだで短距離なら騎士の方が早い。
避けた事でさらに怒りが増したと判断し、騎士は最後にちょっと小馬鹿にしたように、別れの挨拶を残し、港の人通りがあり、殴りにくい場所まで、逃げて行った。
残された健介は見事な騎士の引き際に怒りが収まり、自分のトレーニングに戻る。
健介の家は漁協の事務をやっており、健介も朝一は上がった魚の計量や仕分けを手伝っている。それが終わると夏休みの間は朝から昼まで練習、昼に家に帰ってからは勉強と家の手伝いだ。娯楽の少ないこの島では、一人で過ごすことが多い。
一番仲のいい唯一の同級生である騎士とはゲームを一緒にすることは四六時中一緒にいるわけでもないし、同じ町に住んでいても、本土の学校に行っている他の友達とは高校に行くようになってからは疎遠になってしまっている。
一人で毎日毎日野球の練習。本で読んだりTVで見た事の中で一人でできる事をひたすらに、そんな健介が今日もランニング兼移動のを終え学校に到着する。




