家
「さ、着きましたよ。」
麗華は自分の世界から急に戻され、目の前の騎士の家を見て、思わず、改めてあたりを見回す。全部が同じじゃないけど、今自分が見ている景色は記憶の中にある景色だ。
そして騎士の家に植えてあるサクランボの木をみて確信に変わる。
今よりもずっと小さかったあの木、お姉ちゃんが小学校の卒業式にもらって植えた苗木。
私はそれをサクランボを取ろうとして折ってしまって怒られた記憶がある。
年の離れたお姉ちゃんから初めて本気で怒られて喧嘩した。
「あの、、なにか?」
「ここ、私の家、、」
「?」
「たぶん小学校に入る前、1年位だったけど、私。お父さんの仕事で、この家に住んでた。」
どうして、そこに?そしてその時の記憶がどんどん蘇ってくる。
精霊祭の事、港の景色、それにたぶん、一度遊んだことがある男の子、あれが健介だ。
目つきが同じだし、面影がある。
麗華は、騎士に断りを入れて姉に連絡を入れる。
姉に状況を説明し、自分の記憶に間違いがないかを確認する。
「そう、私もさっき気づいて驚いたの、あなたに虹島でのホームステイを勧めたのは元々暮らしてたからっていうのもあったんだけど、さっき宮野さん家の住所と電話番号見て、私と一緒だって。でも、良く覚えてたわね。私たちが虹島にいたのって4月から12月までで、10年も前の話よ。」
「覚えてるよ流石に、」
「あの時はお父さんの会社が用意してくれた借家だったけど、今は宮野さんが買い取ったみたい。で、どう懐かしい?」
「お姉ちゃんのサクランボの木、まだあるよ。」
「嘘!マジで!ねぇ、後から写真送って、」
「お姉ちゃんテンション高すぎ、、」
「ご、ごめん、どう、やれそう?」
「うん、綺麗な場所だし、騎士君も少し変わってるけどいい人みたいだし、」
「そう、帰ってきたくなったらいつでも言いなさい。」
「大丈夫、なんだか田舎に帰るみたいで楽しいし、それに私も今のままじゃダメだってわかってるから。」
「くれぐれも無理はしないで、なにかあったら私直ぐに迎えに行くから、」
「うん、ありがとう。また電話するね」
「えぇ、待ってるから」
「ごめんなさい、待たせてしまって。」
「いいえ、全然、さ、それじゃ、ようこそ我が家に、」
騎士は門を開け、先に麗華を行かせる。さらには手振りで扉を開けるように指示する。
麗華はインターフォンを押すと、明るい女の人の声が
「はい、宮野です」
「あ、あの、すみません。今日からお世話になります。寒川麗華ですが。」
「麗華ちゃん!ちょっと待ってて」
いきなりのちゃんづけ、それにテンションが高い。
「どうぞ、入って」
鍵を開ける音がし、ドアを開けるように指示される。
麗華は少し疑問に思いながら扉を開けると突然のクラッカー、それも距離が異常に近い。
思わず体がビクッとなり体が固まるとさらに追い打ちで今度は後ろから騎士がクラッカーを鳴らす。
これは完全に不意打ち、麗華は思わず悲鳴を上げ、体が反射的にびくつき、下駄箱にぶつかってしまう。
「大丈夫?」
「は、はい、大丈夫です。」
目の前の女性はおそらく騎士の母親なのだろう、だが、異常に若く感じる。
「そうよかった、ごめんなさい、驚かそうかなって思ったんだけど、やり過ぎたみたい。
改めまして、ようこそ、宮野家へ、私は騎士の母親のさくらです。夏休みの間だけだけどよろしくお願いします。」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
さくらに釣られ、麗華も頭を下げる。




