心の衝動
「変わっているでしょ?高校生にもなった男の子が、マザコンだって、」
「いえ、そんな事は、、」
「、、、、ご両親との仲はどう?」
「どうっと言われましても、、、多分、呆れられていると思います。」
後から考えれば、どうして初対面の相手にそんな事を話したのだろうと、思いたくなるが、愛理の歌声に魅了されていた麗華は愛理に対して会って間もない彼女に心を許していた。
「アイドルになるって言った時に反対されました。それでも私は反対を押し切って、その道を選びました、学校まで変えて、楽でもない家計からお母さんにはレッスン料を払ってもらって、お姉ちゃんにも、それなのに、結局、うまくいかずに、」
「引きこもったと、、」
「!!」
「あら、聞いていなかったのかしら、あなたのお姉さんから相談があったのは私と朧兄様。
騎士君の家を紹介したのは私たちよ。」
「そうだったんですか、あのお姉ちゃんとは?」
「友達かしら、ね。」
「俺に聞かれても知らないぞ、愛理の事だろ。」
「、、、他に何か聞いておきたいことは?」
「あります!愛理さんのさっきの歌、どうしたらあんなふうに歌えるんですか?」
麗華は本能で尋ねる
「、、、意外な質問ね。教えてもいいけど、麗華さんは歌嫌いになっちゃったんじゃないの」
「嫌いになってなっていません!ただ、、、」
「もし、私の歌をいいと思ってくれたのなら、それはきっと私が楽しんで歌っていたからそれだけよ。今日は天気もいいし、空も海も本当に青くて、それにあなたに会えるのも、
楽しいでしょそういうの、だからついね。あなたは、今は歌っていて楽しくない?」
「楽しい、のだと思います。ただそれに、それに怖いのと、辛いのと」
「歌うのが好きだったから、楽しかったから、みんなに喜んでほしかったからアイドルになったんだろ。その目的がすでに失われたならやめればいいだろ、別に道は一つじゃない。
歌う事は別の所でもできるだろ」
「朧兄様は黙っていて、人の心は1か0、YES、NOで割り切れる程ドライじゃないの、心は考えるものじゃないの、感じるもの、理屈じゃないのよ、特に女の子のはね。」
「朧さんー、露骨に嫌な顔しないでください。僕まで巻き添えで怒られそうです。」
騎士はPC画面から顔をそらさず、小言のように朧に聞こえるようにつぶやく。
「でも、諦められない何かがあるんでしょ?だったら納得がいくまでやってみればいいわ。」
「、、、、、」
そう言われても何をどうすればいいのか皆目見当がつかない。
その様子を見て愛理は笑い、愛理にありきたりの励ましの言葉をかける
「、、、、朧さん、あの笑い方、愛理さんまた何か考えてるでしょ。」
「お前くらいだよ、愛理が腹黒いの分かってるのは、まぁ、どっちにしろ何を言っても無駄だし、悪意はないだろうから、あと、、」
「めんどくせぇ、ですよね。そんなんだからモテないんですよ」
「、、あのなぁ、なんでもその一元で物事を考えるんじゃねぇよ。いいか、俺は」
「人とコミュニケーションが取れないわけでも、相手の心中を理解できていないわけでもない。他人と仲良くする気がなく、相手になぜ俺が合わせないといけないんだ。俺はお前に用事はない。お前が俺に合わせろ、でしょ。知ってますよ、それが定型であるように、
僕のさっきの言葉も定型です。お気になさらず。」
騎士は自分の作業を終え、麗華の体調も問題ない事を確認すると、麗華の同意を得て帰る準備を始める。
「麗華さん、もし何かありましたらいつでもこちらへ、いらしてくれて構いません。
私でよければいつでもご相談に乗らせていただきますわ。」
「あの、また歌、見せてもらっていいですか?」
「えぇ、構いませんよ。よければお教えしますわ、麗華さんはちゃんと勉強されていますので、きっとすぐに私よりもずっとうまく、歌えて踊れるようになりますわ。」
「ははは、」
歌う事に、踊る事に抵抗のある麗華は笑ってごまかす。
2人に見送られての騎士の家への道中、麗華は何度も頭の中で、愛理の歌を思い出していた。決して敵わない才能。今までの自分の努力を無駄にするような力の差。
初めて、つばさにあった時と同じ感動が、諦めきれない自分の気持ちが呼び起こされる。
敵わないから諦めがつくのではなく、同じようになりたいという気持ち、
頭の中で思い出すほどに今すぐにでも何かをしたいという情熱がよみがえってくる。
騎士の後ろで歩きながら、自分の中で曲を再生させ、無意識に体を動かしてしまう。
その動きがだんだん大きくなり、思わず歌い出しそうになった時、騎士は足を止める。




