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一期一会 第三部  作者: ヤルターフ
第三編 天馬行空
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日常生活 2

 白無垢に身を包んだロクサーヌがデューイに伴なわれ、静々と薔薇の上を歩んでくる。ロクサーヌがレウレトの隣までくると、エスコートしたデューイが二人の前に立った。


 豊潤な香り漂うこの空間には二人の他に神父として黒の執事服を着たデューイと、レウレトの母であるレティシアと、十六年来の親友であるピガットしかいない。東屋の吹き抜けを仰ぎみれば碧天雲一つ無く陽光降り注ぐ。風がそよぎ、小鳥のさえずる中、二人の人生の門出を祝う神聖なる儀式が執り行われた。


「レウレト=フォン=ルクレール」

「はい」

「汝は健やかなる時も病める時も、妻であるロクサーヌを愛することを誓いますか?」

「誓います」

 凜としてレウレトが返事するのを聞いて、デューイはロクサーヌに顔を向けた。

「ロクサーヌ=セフィーロ」

「はい」

「汝は健やかなる時も病める時も、妻であるレウレトを愛することを誓いますか?」

「誓います」

「夫婦の証である指輪の交換を」


 デューイが箱のフタを開けて中にある指輪を二人に渡す。


 レウレトが渡されたのはブルーサファイアに獅子が彫られている。これはエスカレットが生前レティシアに渡したもので、形見として貧乏のどん底に居ても肌身離さず持っていたのだ。片やロクサーヌに渡された指輪はルビーに獅子が彫られている。レウレトの幼少時代にエスカレットが渡したものだ。レウレトが青玉の指輪をロクサーヌに、続いてロクサーヌが紅玉の指輪をレウレトの薬指にはめる。それを認めてデューイが言った。


「誓いの口づけを」


 ロクサーヌが跪坐きざしてレウレトがうやうやしくとヴェールを上げる。そこには星の瞳をして華やいだ笑顔をしたロクサーヌがいる。彼女の瞳には可愛くて仕方がないレウレトが映えている。そうして二人は見つめ合い、誓いのキスを交わした。


 かくしてレウレトは最愛の人と結ばれたわけだが、これは正式なものではない。米帝のデータベース(※二百年経って閲覧可能になった)にもあるように彼は生涯独身であった。なぜに彼は籍を入れなかったかというと、それは彼自身の権力がまだ不十分だからだ。確かに彼はテキサスの英雄として民衆からは喝采を浴び、軍内部に於いてはテキサス攻略の実績によって一目置かれ、さらには皇帝ランカスターからの信頼は絶大である。しかし当時の政府及び軍上層部にはまだシェイン族に対する偏見の眼差しが色濃くあった。さらに当時の米英公会の上部機関に当たる枢機院に於いて、アーチを中心とした金権政治が猛威を奮っていた。その不安定な状態で公表するのは自身の出世を妨げてしまう。彼はその拒絶反応を危惧していたのだ。確かにジュストを筆頭とする改革勢力は存在していたのだが、その数はまだ微々たるものである。ゆえにやむなく時勢を静観する態度をとった。


 しかしただ手をこまねいている彼ではない。ジュストの主催する慈善財団に匿名で毎月十万ドルを寄附していた。それは赤い封筒に小切手として送られたものだから、もちろん誰が寄附したのかはジュストには分かっている。のみならず彼はジュストの政敵であるアーチにも選挙支援をしている。この二人は言わば水と油そのものであり、互いに忌み嫌い蛇蝎視だかつししているのだが、その間に入る形で権力均衡を計っていた。自身の権力を盤石のものにする手段としてアーチを利用し、自身の夢を叶えるべくジュストに肩入れしていたのだ。恐るべきバランス感覚としか言いようがない。ここに彼の政治的天才の片鱗が窺える。曠世の経世家と言われたるゆえんである。その彼が最愛の人をなぶりものにしたウォーレンを放っておくはずがない。人間レウレトに興味を抱く方も多いだろう、これはどう見ても彼の私怨に他ならないのだが、米帝の英雄と言われた彼の側面を以下に記してみたいと思う。そのついでに彼の新婚生活にも触れておきたい。

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