アンダー ザ ローズ 11
「わたしにとって、あなたは太陽だった。わたしに光を与えてくれた。わたしに温もりを与えてくれた。わたしに生きることの喜びを教えてくれた。そして、わたしのことを愛してると言ってくれた……」
ロクサーヌが頬に伝う涙を払いつつ言の葉を紡いでいく。
「本当に嬉しかった……。あなたのことが、本当に好きだったから……。だから、あなたにはわたしの汚いところを知られたくなかった。見られたくなかった……」
「ロクサーヌ……」
言いつつレウレトは両の掌で彼女の顔を包み、親指で涙を拭う。
「オレは、きみと同じだ」
「レト……、ありがとう」
ロクサーヌが華の咲いたような笑顔を見せた。
「オレの頭を触ってごらん?」
レウレトがそっと彼女の手を取り、"名残"を触らせる。
「これは……?」
「きみと同じ耳だ」
「ウソ……」
「嘘ではない、ほら」
言いつつ彼はロクサーヌの手を着ていたガウンの中に入れる。すると彼女の手にふさふさと当たるものが分かった。
「じゃあ……、これは……」
「きみと同じしっぽだ」
言って彼がガウンの前を外して、しっぽを取り出す。まだ信じられないといった表情をして彼女が尋ねた。
「触っても……、いい?」
「ああ」
ロクサーヌが両手でそれを掴む。すると赤いふさふさのしっぽはくすぐったそうにしてひょこひょこと動いた。
「ロクシー、オレはきみと同じなんだ。レティシアはオレの母で、父は人間だ。父上は身分など関係無く母上を愛した。それでオレが生まれた。母上は理由あって父上の許を離れたが、母上はもったいなくもオレを愛してくれた……」
虚空に浮かぶ月を見上げて彼が続ける。
「母上はオレを女手一つで育ててくれた。子供心にも母上がどんなに苦労していたかは分かる。それはもうすごかった。あの時の貧乏はなにせ迫力があった。だからオレは母上を助けようと、よく地べたをはいずり回っていたものだ……。確かにきみの受けた苦しみとは比べられない。だが分かち合うことはできる。オレはきみを照らす太陽でありたいのだ。きみの憂苦を取り除きたいのだ。きみの笑顔が見たいのだ」
ロクサーヌの星のように輝く瞳を見つつレウレトが言った。
「オレは……、きみのためなら死ねる」
それが彼の覚悟であった。二十二年間闘い続けた彼の原動力であった。ロクサーヌのために彼は五彩に輝く虹を追い求めていたのだ。それは他ならぬ理想郷を作るということだ。その理想郷が彼の建国したシェイン共和国だった。
「ロクサーヌ、きみはオレに言った、オレは太陽であると。ならばきみはテラだ」
「テラ?」
「そうだ、きみの瞳のように青く美しいこの星の名だ」
「レト……」
「オレは……、きみと一つになりたい。だから……、結婚してくれ」
青玉の瞳を星のように瞬かせてロクサーヌが返事をした。それを合図に二人は見つめ合い、口づけを交わす。互いの舌が絡み合い、唾液が媚薬となって二人を痺れさせる。ゆったりと唇が離れた時、レウレトの虚ろな瞳を見つめて頬を朱に染めたロクサーヌが言った。
「あの……」
「うん?」
「はしたない女だと、思わないで下さいね」
レウレトが快楽の予感をするとロクサーヌが彼を押し倒し、また唇を重ねた。そうして二人は幾度も互いを求め、羽化登仙の境に入った。




